会社として、あるいは個人事業主として会計処理を行う場合に、イレギュラーな取引が出てきて困ることは多々あるものです。その一つが「謝礼金」でしょう。
ここでは、謝礼金とは何かを説明し、謝礼金をもらったときに使う勘定科目について紹介します。また、勘定科目を管理しやすい会計ソフトを紹介するとともに、謝礼金の会計処理の注意点を支払先の経費処理をイメージしながら解説します。
謝礼金とは
謝礼金は、「礼」という言葉が含まれていることから理解できるとおり、お礼の意味が込められたお金になります。一例として、メディアなどの取材に協力した、講演会の講師に招かれた、取引先のイベントを手伝った際などに受け取る金額が挙げられます。
なお、個人で受け取る金銭の種類として給料や報酬が挙げられますが、これらは謝礼金と違い「労働やサービスなどの対価」として支払われるものを指します。また、謝礼は「気持ち」の意味合いが強いため、金額は比較的少額になるケースがほとんどです。
謝礼金をもらった際の勘定科目とは
一口に謝礼金と言っても、場面によってさまざまなケースが考えられます。ここでは、もらった謝礼金の種類に応じてどのような勘定科目を使用できるか考えてみましょう。
謝礼
手伝いをした、あるいは協力した際にお礼として受け取る種類のものになります。報酬と言うよりも「気持ち」が表現されているもので、対価の意味合いがなく、意図せず受け取るお金になるでしょう。このような謝礼金は「雑所得」として処理します。
謝礼は現金として受け取るほかに、商品券などで渡されることもあります。現金同様に使える商品券やクオカードなどの勘定科目は、現金として処理します。なお、雑所得は年間で20万円以下であれば、確定申告が不要です。
紹介
顧客を紹介したなど、相手に利益になるような行為に対しての謝礼になります。紹介した際の謝礼金の処理は、ルールに基づいたものかどうかで使用する勘定科目が分かれます。
紹介した際に受け取る金額や条件があらかじめ決められている場合は事業性が高いため、「売上」として処理します。一方、規定などが存在せず、副業の意味合いが強いものは「雑所得」で処理します。
サービスの提供
自身の経験やスキルなどを見込んで講演を依頼されたり、デザインなどを提供した場合に支払われる謝礼金は、通常は「事業所得」として処理します。ただし、本業とは一線を画す場合は「雑所得」とします。
謝礼金や勘定科目も管理できる会計ソフト
謝礼金の受け取りを含めた会計処理には、会計ソフトで管理するのがおすすめです。この章では、謝礼金や勘定科目を管理しやすいソフトを紹介します。
WEBバランスマン
公益法人を対象とした会計ソフトは限られますが、謝礼金の受け取りなどを含め公益法人ならではの会計処理に強みを発揮するのが、公益情報システム株式会社が提供する「WEBバランスマン」です。伺書から入力できる機能が標準で装備されているため、会計処理にかかる時間の削減が可能になるでしょう。
また、異なる会計基準に応じた決算書を作れるほか、按分マスタを活用することで会計や事業で按分が必要な伝票を一度の入力で処理できます。この機能は、複数の部門が関係する謝礼金の受け取りにも活用できるでしょう。細かい権限設定をして担当者ごとにメニュー表示や閲覧・入力の有無を制限できるため、ヒューマンエラー防止にも役立ちます。
弥生会計オンライン
弥生株式会社が提供している「弥生会計オンライン」は、簿記や会計の知識がさほどない人や、初めて会計ソフトを使う人を意識して画面や機能が設計されています。そのため、会計ソフトの扱いが不慣れであっても、謝礼金などの処理を含め、複式簿記で記帳しやすいでしょう。
銀行明細やクレジットカードの取引データを取り込んだり、レシートや領収書をスキャンして自動で仕訳を作成する機能も備わっているため、入金だけでなく経費処理もスムーズに行えるはずです。さらに、弥生会計オンラインの強みはカスタマーセンターが充実していることです。電話・メールで操作のサポートが受けられるほか、仕訳や経理の相談も可能です。
マネーフォワードクラウド
使用感を試してから本格導入できるのが、株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワードクラウド」のメリットです。トライアルの段階で操作性を確認したり、運用方針を検討しておけば、本格導入してから後悔や悩みは少なくなるでしょう。これまでの記帳データをソフトに取り込めるため、会計システムの変更を考えている方は検討すると良いかもしれません。
発生頻度が高い仕訳は登録しておき、入力の手間を省くこともできます。また、登録したい仕訳を仕訳帳から選んで登録することも可能です。稀にしか発生しない謝礼金の仕訳を登録しておくと、次回発生した謝礼金をスムーズに処理できるでしょう。
謝礼金をもらった時の勘定科目の注意点
謝礼金は通常の取引よりも発生頻度が比較的低いため、正しい会計処理ができていない場合もあるでしょう。ここでは、良く見られるケースを例にとり、会計処理の際の注意点を記載します。
謝礼金から源泉所得税が徴収されている
通常、謝礼金は千円単位あるいは万単位など、端数がない形でもらうことが一般的でしょう。しかし、もらった謝礼金に端数がある場合は、「源泉所得税」が徴収されている可能性が高いといえます。
なお、個人が法人から謝礼金をもらった場合は、謝礼の金額に端数が生じていなくても、源泉徴収されていると考えた方がよいでしょう。法人から個人への謝礼の場合は、所得税等を徴収しなければならない仕組みになっているからです。法人から法人への謝礼で領収証をもらったり、法人名義の口座に謝礼を振り込む場合は、源泉徴収が行なわれません。一方、個人への謝礼金は支払う側が源泉税を納税しなければならないため、源泉徴収が発生するのです。
なお、謝礼金にかかる源泉徴収税率は金額により異なります。謝礼金を支払う側は、支払金額が100万円以下の場合は10.21%、100万円をこえる際は20.42%の税率で計算しています。なお、これらの税率には所得税に加え、復興特別消費税が含まれています。
また、専門的な知識に基づきサービスの提供を行った場合には、消費税の課税対象となることも注意点です。このようなケースでは、ほとんどの場合、受け取る請求書や領収書に消費税の明細が書かれているため、それに沿った会計処理が必要になります。
源泉徴収された謝礼金の会計処理方法
ここでは、個人事業主が源泉徴収された謝礼金を受け取った際の会計処理を例に挙げて説明します。支払う側の会計処理も紹介しますので、自身が謝礼金を渡す際の参考にしてください。
謝礼金が40,000円だった場合の、受け取り側の会計処理は以下の通りになります。なお、源泉徴収金額は「事業主貸」とし、確定申告の際に還付されるよう処理します。
借方
・現金39,916円
・事業主貸4,084円
貸方
・売上(雑所得)40,000円
・仮受消費税等4,000円
ちなみに、支払う側の仕訳は以下の通りです。
借方
・支払報酬(雑費)40,000円
・仮払消費税等4,000円
貸方
・現金39,916円
・預り金4,084円
支払い側の消費税に関する考え方ですが、謝礼金額の中に消費税等の額が含まれている場合は、消費税等の額を含めた金額から源泉徴収するのが原則です。
ただし、請求書などで謝礼金と消費税額等を明確に区分して表示している場合は、消費税等を含まない謝礼金が源泉徴収の対象となることを許可しています。謝礼金の受け取り側は、明細を見て相手の経費処理の方法を理解し、会計処理を行うとよいでしょう。
もらった謝礼金の勘定科目と処理方法のまとめ
もらった謝礼金は、謝礼の性質により雑所得や売上として処理します。なお、法人から個人に向けた謝礼金は、法人側の経費処理の段階であらかじめ源泉徴収をする決まりになっています。そのため、受け取り側は「源泉所得税」や「消費税」などの勘定科目を用いて仕訳を作成する必要があることが注意点です。
複雑な処理も多いので初心者でも使いやすい会計ソフトを使用すると、謝礼金の処理も楽に行なえるかもしれません。