企業や個人に支払われる金銭の中に、給与や報酬とは少し違った「謝礼金」と呼ばれているものがあります。この謝礼金を支払う際に、経理をするうえでどの勘定科目に仕分けるのが適切かを知り、税制に対応することが大切です。
そこで今回は、謝礼金の経理・税制上の扱いや、給与・報酬との違い、さらに勘定科目の確認や仕分け時の注意点について押さえましょう。
謝礼金とは
「謝礼金」とは、協力やサービスへの「お礼として支払われる金銭」を指します。例えば、時間を使って何かしてもらったとき、専門的な知識やスキルでアドバイスを受けたときに支払われるものが一般的でしょう。また、講習やセミナーの講師・講演者として招かれた場合にも謝礼金が支払われることが多いです。
ただし、謝礼金は名目上は「謝礼金」と称していても、実質的には「報酬」の場合もあります。実態が報酬の場合は、「報酬」に適用される経理処理や税法の対象として処理しなければなりません。
報酬と給与との違い
謝礼金は、「報酬」や「給与」とは法律的にも経理上も異なる意味の言葉です。まず、「謝礼金」と「報酬と給与」の大まかな違いは、「報酬と給与」が労働や成果物に対する支払いに対し、謝礼金は感謝の意味を込めて支払われる金銭です。
次に、「報酬」と「給与」を細かく分けて説明します。まず、「報酬」は「雇用契約を結んでいない労働や成果物」に対しての支払いです。通常、個人事業主や法人に対しては「報酬」が支払われています。例えば、個人事業主として有名な弁護士や会計士などの職種、メディアに露出する講演者・講師などが仕事の対価に報酬を受け取る形です。依頼者と雇用契約は結ばないため、「報酬」という区分になります。
一方、「給与」は「雇用契約を結んだ労働や成果物」に対して支払われる金銭です。雇用契約に基づき一定の業務を遂行し、雇用主から月単位で給与を受け取ることが一般的です。給与には基本給だけでなく、ボーナスや残業代なども含まれます。これは、正規社員や派遣、アルバイトなどの労働者が契約に基づいた労働で受け取る金銭であり、どの労働形態でも雇用契約さえあれば、受け取る金銭は「給与」と呼びます。また、ボーナスを現物で支給する際は、金銭で支払われなくても、給与に該当します。
一般的に、給与のことを謝礼金とは呼びませんが、労働とは切り離して受け取る謝礼金も中にはあるでしょう。
謝礼金の勘定科目
謝礼金を会計上どのように処理するかは、企業や組織の会計方針により異なります。一般的には、「接待交際費(交際費)」と「支払手数料(支払報酬料)」の勘定科目が使用されます。
接待交際費
「接待交際費(交際費)」は、ビジネス上の会合や商談、取引の際に行われる接待や交際にかかる費用を記載する勘定科目です。ビジネス上の関係を深めたり、取引先や顧客との信頼関係を築くために使われた費用を指します。
例えば、取引相手を招待しての食事会や懇親会、ビジネスランチ(5千円以上)、ゴルフや釣りなどのレジャーアクティビティ、接待場所の料金、贈答品などが含まれます。一般的には、業務上の必要性や相手先との関係性、費用の合理性などを考慮して、適切な金額と内容で決定されるべき勘定項目です。謝礼金を接待交際費(交際費)で計上する場合、例えば交通費と合わせて支払うことがあるため、仕分けの際はどちらに記載するか気をつけましょう。
支払手数料
「支払手数料(支払報酬料)」は、事業を運営するために発生する手数料や手続き費用、謝礼金や報酬を記載する勘定科目です。支払いに伴って、報酬以外にも手数料の支払いに関連する費用が発生する場合にも使用されます。謝礼金の処理では、相手が法人の場合と個人の場合で、仕分け方が変わります。
例えば、法人相手への謝礼金は、一般的には前述の「接待交際費」として処理されます。しかし、個人では接待交際費ではなく、「支払手数料」になります。
その他の勘定科目
また、謝礼金を報酬と区別する場合は、「お礼の意味合いが強い」かどうかを確認することが重要です。お礼の意味合いが強い金銭の支払いは、報酬ではなく謝礼金として処理できます。それから、雇用者への「祝金」は謝礼金とはまた異なります。自社の社員に対しては福利厚生となるため、お祝い金支給は「福利厚生費」の勘定科目です。
謝礼金を取り扱う時の注意点
謝礼金を取り扱う際には、源泉徴収の有無とその仕分け方の2点に注意します。まず、謝礼金を支払う場合、報酬や給与と実態が同等であれば、源泉徴収が必要となります。特に個人に対して謝礼金を支払う場合には、源泉徴収を行った後に消費税を加えて渡す必要があることです。源泉徴収の有無はさまざまな条件によって決まっています。
例えば、原稿料や講演料は源泉徴収が必要ですが、1回の金額が5万円以下なら源泉徴収の対象とはなりません。その一方、10万円の謝礼金支払いは実質的な「報酬」に区分されると同時に、源泉徴収の対象になるでしょう。
なお、謝礼金から源泉徴収された分の金額は、経費に計上することができません。ここでの経費(経常費用)とは、業務上必要と認められる費用のことです。源泉徴収は経費の一部ではないため、その分を除いた金額を記載する必要があります。
謝礼金も分かりやすく管理できる会計ソフト3選!
謝礼金の基本を押さえたところで、次に謝礼金の管理ができるおすすめ会計ソフトを3つ紹介します。
WEBバランスマン
公益情報システム株式会社の「WEBバランスマン」は、公益法人向けのおすすめ会計ソフトです。主な機能には、「収入支出伺書の入力」や「16/20年会計基準に基づく決算書の出力」などがあります。また、支払調書・源泉徴収票の印刷も機能の1つです。経理に慣れていない人でも操作が簡単にしやすいため、銀行振込や現金支給の明細書・領収書からの経理書類作成も容易です。
さらに、クラウド版とオンプレミス版の両方が提供されており、法人のインフラ環境に合わせて選択できます。公益法人のニーズに合わせた謝礼金の効率的な会計管理を実現できるでしょう。
弥生会計
「弥生会計」は、簿記の知識があまり無い人でも使いやすい会計ソフトです。初心者でも導入しやすく、謝礼金を含む会計処理の機能があります。支払情報との連携により、経費(謝礼金など)のデータを自動的に取得することができます。
また、謝礼金の処理がわからない場合も、サポート体制が充実しているため、必要なときに問い合わせることができます。毎日の経費を分析し、グラフ化されたデータで視覚的にわかりやすいレポートを提供してくれます。
freee会計
「freee会計」は、謝礼金の管理ができるクラウド型会計ソフトです。事業規模(個人・法人・中規模向け)に応じたプランを用意しています。謝礼金に関しても、操作が簡単で基本ガイドが付いているため、会計処理を行う際も効率よく使うことができるでしょう。
例えば、一般的な会計処理で謝礼金のデータを勘定科目で記帳することができます。具体的には、メニューの「取引」から「取引の登録・一覧」または「自動で経理」の項目を選択し、取引の登録を行うことができます。さらに、freee会計では、銀行口座や支払い明細を活用した自動仕訳入力機能が使えるのも魅力です。
謝礼金は勘定科目を確認し、自社に合った会計ソフトを導入しよう
今回は、謝礼金について給与や報酬との違いや仕分けのしかた、勘定項目に記載する際の注意点などを解説しました。謝礼金は、報酬や給与に該当するかをチェックし、そのうえで相手が個人の場合は、源泉徴収の有無も把握することが求められます。
また、紹介したおすすめの会計ソフトを使用すれば、処理が複雑になりがちな謝礼金の入力や仕分けも効率的に行えるようになるでしょう。