時代の変化とともに、社会や企業に求められるものも変わり続けています。企業が求められているものの一つに「ペーパーレス化」があるでしょう。言葉だけでとらえれば紙の使用をやめることに過ぎませんが、実際のところそう簡単にはいきません。企業にはそれぞれ体質や慣習があり、ペーパーレス化はそれらに抗ったうえで取り入れなければならないケースもあるためです。
しかし、社会全体で求められているペーパーレス化に対応できなければ、時代やニーズの変化についていけず淘汰されてしまうおそれが高まります。もはや、多くの企業にとって無視できない改革の一つといえるでしょう。本記事では、ペーパーレス化について解説し、実際に取り入れた企業の事例にも触れながら、ペーパーレス化によるメリットを紹介します。
ペーパーレス化とは?
これまでの企業は、主に紙を使って社内での業務や取引先とのやり取りを行ってきました。ペーパーレス化とは、そうした紙に記載やプリントアウトしていた資料や文書などを電子化し、データによるやり取りや保存に対応することです。社内では申請書や稟議書、会議資料などがペーパーレス化の対象となります。取引先に対しては領収書や請求書、消費者に対してはパンフレットやカタログなどでペーパーレス化が可能です。企業や部署により、ペーパーレス化の対象は異なるでしょう。
あくまでも、これまで紙が使われていたものを電子化する取り組みがペーパーレス化です。名刺や社員証などを電子化している企業も出てきています。古い慣習や固定観念にとらわれないことが、ペーパーレス化のポイントともいえるでしょう。
ペーパーレス化の主な方法
ペーパーレス化の方法は、主に2つあります。1つは、紙のものを電子化する方法です。紙で受け取った領収書や請求書などを、スキャナで取り込んだりスマートフォンで撮影したりして読み込みます。規定の形でデータ化ができれば、領収書などは破棄しても問題ありません。もう1つは、そもそも取引先などとの書類のやり取りを電子化する方法です。パソコンなどを用いクラウド上で領収書や請求書のやり取りを行えば、紙を使う必要性は生じないでしょう。そのまま保存・管理できるので、ペーパーレス化の恩恵をより受けられます。
半数以上の企業がペーパーレス化を実施
2022年に実施された「ペーパーレス化に伴う2023年度予算」に関する調査によると、同年の社内のペーパーレス化について「積極的に行った」と回答した東京都内の企業は17.8%でした。「ある程度行った」の34.6%と合わせると、全体の52%ほどがペーパーレス化を推進していることになります。まだ多いとはいえないものの、少しずつペーパーレス化が進められている現状もみてとれるでしょう。
出典:ペーパーロジック株式会社 「ペーパーレス化に伴う2023年度予算」に関する調査
ペーパーレス化が進みづらい理由
半数以上の企業がペーパーレス化を進めている一方で、消極的な姿勢の企業も少なくありません。同調査では、ペーパーレス化を行っていない企業のうち、今後のペーパーレス化システムの導入に向けた予算配分について「予定/検討していない」と回答した企業が78.0%にものぼりました。ペーパーレス化の推進に積極的な企業と、まったく意義や必要性を感じていない企業とに明確に分かれている現状も把握できます。
ペーパーレス化が進みづらい理由の1つには、システム導入にかかるコストが挙げられるでしょう。ペーパーレス化に必要なITリテラシーが備わっていない企業もあります。システム障害などを懸念して、積極的になれない企業も少なくありません。企業ごとに理由は異なりますが、社会全体でさらにペーパーレス化を進めるには、これらの課題に対するアプローチも不可欠です。
ペーパーレス化の事例3選!
ペーパーレス化の実態や効果を把握するには、実際に取り入れている企業の事例を参考にするとよいでしょう。ここでは、ペーパーレス化の事例を、主な取り組み方法と効果に触れつつ紹介します。
ぺんてる株式会社
学用の文房具などを製造・販売している「ぺんてる株式会社」では、以前から経営会議や取締役会などが長時間に及ぶといった課題を抱えていました。その課題の解決のために取り入れられたのが、iPadを活用したペーパーレス化です。会議などで使用する資料を紙からタブレット端末へと変えたことで、これまで半日かかることもあった会議が、1.5時間に収まるようになりました。情報共有もしやすくなり、議論にも集中しやすくなったことが、会議時間短縮の効果を生んでいます。資料の用意の手間も減り、業務の効率化もあわせて実現した事例です。
参照:NEC ConforMeeting/e ぺんてる株式会社様 導入事例
株式会社ライフコーポレーション
スーパーを運営する「株式会社ライフコーポレーション」も、店長会議でのペーパーレス化を推し進めた企業の1つです。1度に100人以上もの人が参加する店長会議では、資料の用意に課題を抱えていました。会議の途中で増刷しなければならないケースも多く、そうした状況の改善のためにペーパーレス化を取り入れています。結果、毎月6万枚の削減効果が得られました。また、モノクロ印刷だった会議資料をカラー表示に変えられたことにより、参加者に伝わりやすい質の高い資料に仕上げられるといったメリットも生じています。作業時間や人件費も節約でき、さまざまなコストの削減に成功した事例といえるでしょう。
株式会社カオナビ
タレントマネジメントシステムの開発・提供を行っている「株式会社カオナビ」では、契約書のペーパーレス化を推し進めました。電子契約サービスの利用により、物理的な契約書や押印を不要としています。結果、事務担当者による契約書の作成や印刷などの業務時間の大幅な削減を実現しました。また、契約に印鑑が不要なシステムは顧客からの評価も高く、よい関係性を築くことにも寄与しています。まだ残っている手動による業務も、徐々にペーパーレス化や自動化を進める方針です。
参照:クラウドサイン連携でユーザーの利便性と営業生産性を両立。テレワークをきっかけに開始した契約業務の電子化
事例から学ぶペーパーレス化をするメリット
上記で紹介した各企業の事例から、ペーパーレス化によって得られるいくつかのメリットが見出せるでしょう。ここでは、ペーパーレス化を推し進めるメリットをまとめます。
コストの削減が進む
多くの企業に共通しているメリットが、コストの削減です。ペーパーレス化により、紙の使用頻度が大幅に減ります。企業によっては毎月数万枚にもおよぶ節約ができ、それに伴って使用されるインク代や電気代といったコストの削減も進められるでしょう。コピー機などを複数台設置している企業では、台数そのものの削減も可能です。保管が求められる資料を置いておく場所も減らせるため、オフィスや倉庫にかかる賃料などの固定費も削減できます。
業務の効率化や生産性の向上に寄与する
資料の用意にかかる時間が抑えられ、その時間を他の業務へと費やせることで、業務全体の効率化の効果も得られやすくなります。会議や各従業員の主要業務への集中度も高められるので、さらに生産性を上げられるでしょう。作業の手間が省け、従業員の満足度が向上した企業も少なくありません。働き方改革を推し進めるのにも、ペーパーレス化は一役買っています。
企業の価値や評価を高めやすい
ペーパーレス化の推進は、従業員の働きやすさへとつながるケースが多くみられます。また、SDGsへの貢献も内外へとアピールできるので、求職者や取引先、消費者からの評価を高めるといったメリットももたらすでしょう。結果、企業やブランドの価値を高め、事業の拡大や取引先の開拓、優秀な人材の確保などといった恩恵も得られやすくなります。
公益法人は特に専用のソフトを使うのがおすすめです。公益法人用のソフトに「WEBバランスマン」があるので、こちらも検討してみてください。
ペーパーレス化の事例についてまとめ
紙での資料の作成や文書のやり取りを電子化するペーパーレス化は、多くの企業にとって避けては通れない取り組みといえるでしょう。実際に、多くの企業が取り入れ始めており、それら企業ではコスト削減や業務の効率化などの成果を上げています。こうした事例を参考にしつつ、できるところからペーパーレス化を進めていきましょう。最初は、特定の業務や部署のみでも問題はありません。そこで成果が出たら、徐々にさらなる業務や部署へと広げていきます。最初は抵抗感を抱いている人でも、成功事例を目の当たりにしたり利便性の高さや効率のよさなどを実感したりすることで、自然と受け入れられるようになるでしょう。