企業が求められる変革の一部に「ペーパーレス化」があります。さまざまなメリットをもたらすペーパーレス化ですが、一方で、デメリットの存在も無視はできません。
これから電子化を進めていく予定のある企業は、途中で形骸化したり頓挫したりしないよう、事前にペーパーレス化のデメリットを押さえておきましょう。
ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは、主に電子化により紙の使用をなくすことを意味する言葉です。企業においては、経営や運営に必要な文書や書類、資料の類を電子化し、コンピュータ上やクラウド上で管理・活用することを意味しています。また、そうした取り組みによって業務の効率化やコストの削減などのメリットを享受しようとしたり、実際に成果をあげたりした変革全体をペーパーレス化と表現するケースもあるでしょう。
ペーパーレス化のデメリット
ペーパーレス化にはいくつものメリットがありますが、一方で、デメリットの存在も否定はできません。デメリットやリスクを無視したまま推し進めると、それらが顕在化したときに変革が行き詰まるおそれがあります。ここでは、導入前に把握しておきたいペーパーレス化のデメリットや注意点をまとめてみましょう。
導入や運用にコストがかかる
ペーパーレス化のためには、それを可能とするソフトやシステムを導入しなければいけません。社内でパソコンやタブレットなどを常時使用している人が少ない場合は、そうした機器の導入も不可欠です。初期費用だけではなく、ソフトやシステムを継続的に使用するためのランニングコストもかかります。より多くの業務のペーパーレス化を実現するには、ソフトやシステムの拡張・連携なども必要になってくるでしょう。社員数や業務数が多くなるほどに、導入や運用にはコストがかかる点はペーパーレス化のデメリットといえます。
ある程度のITリテラシーが求められる
新たなシステムを使いこなすには、ある程度のITリテラシーが求められます。実際には、操作性がよく利便性の高いソフトやシステムも増えているため、そこまで多くの時間や労力をかけずとも使いこなせるようになるでしょう。しかし、普段からパソコンやタブレットを使い慣れていない人にとっては、越えるべき大きなハードルとなりえます。コスト同様に、業務数が増えるほどに覚えなければならない操作も増えるのが一般的です。構成社員の年齢層などにもよりますが、新たなシステムを導入する以上、ITリテラシーの課題は避けては通れません。
一時的に業務効率が低下するおそれがある
ペーパーレス化当初は、不慣れな社員も多くおりワークフローも変化することから、業務効率が低下するおそれがあるでしょう。多くの場合は一時的なものですが、そこでペーパーレス化を見限りってしまうと、いつまで経っても書類や文書、取引先とのやり取りの電子化は実現しません。また、一時的な業務効率の低下が業績に大きな影響を与えてしまうリスクもあります。結果的に損害を被れば、ペーパーレス化のデメリットによる悪影響ばかりが目立ち、メリットを享受できないまま頓挫するおそれも高まってしまうでしょう。
抵抗勢力があると導入や推進が限定される
これまで積み上げてきた企業の慣習や文化を変えることに抵抗感を抱く人は少なくありません。特に、年齢層の高い社員は、ペーパーレス化などの変革の抵抗勢力となりえます。ペーパーレス化を推し進めるには、こうした抵抗勢力にも納得してもらう必要があるでしょう。推進派のみで取り組んでしまうと、ペーパーレス化が限定されかねません。意図しない適用範囲の限定化は全社的な取り組みの弊害となり、やはり形骸化や頓挫のおそれが出てきてしまいます。
取引先との擦り合わせが欠かせない
会議で使用する資料や稟議書などは、社内で電子化を進めればペーパーレス化の実現が可能です。しかし、請求書や契約書、領収書の類は、取引先との擦り合わせが欠かせません。すべてを紙でやり取りしている取引先がある場合、一部の書類のペーパーレス化は難しくなります。取引先へと理解を求めるなどの働きかけや配慮が必要となるでしょう。そうした手間がかかったり、自社のみでの解決が難しい分野があったりする点も、ペーパーレス化のデメリットの一つです。
セキュリティ面で不安が残る
電子化された書類や文書などは、コンピュータ上やクラウド上で保存・管理されます。そうした性質上、不正アクセスによる情報漏洩やデータの改ざんを完全に防止するのは困難です。ソフトやシステムの進化によりリスクはとても低くなってはいるものの、セキュリティ面で不安が拭えない点はペーパーレス化のデメリットといえるでしょう。
ペーパーレス化のデメリットの改善策
上記のように、ペーパーレス化にはデメリットも存在しています。しかし、それぞれのデメリットは適切な改善策を講じることにより、ある程度は防げるでしょう。少なくともリスクの軽減は可能です。ここでは、ペーパーレス化のデメリットの改善策を紹介します。
適切なソフトやシステムを導入する
ペーパーレス化する際に、適切なソフトやシステムを導入することで、多くのデメリットやリスクの軽減が期待できます。料金も含めたソフト同士の比較検討により、コストも抑えやすくなるでしょう。操作性や視認性が高く、専門知識がなくても扱えるようなシステムであれば、高いITリテラシーも求められません。アクセス権限の設定やセキュリティソフトのアップデートなどが行われているシステムなら、安全面のリスクも抑えられます。
社員への研修や周知を行う
ソフトやシステムを導入したら、社員への研修や周知も徹底しましょう。まずは、ペーパーレス化の意義やメリットの説明が必要です。社員の理解が深まれば抵抗勢力だった人たちにも納得してもらえ、全社的にペーパーレス化を進められます。事前の研修により、導入当初にしばしばみられる業務効率の低下も防げるでしょう。
限られた業務や部署から取り組む
規模の大きな企業の場合、限られた業務や部署から取り組むのも、ペーパーレス化のデメリットの重要な改善策となります。会議資料から始めたり、経理部門から取り入れたりなどしてみましょう。ペーパーレス化を戦略的に限定すると、研修や周知が必要な社員数も減らせます。抵抗や負担を感じる人も減らせ、導入のハードルを下げられる点もメリットです。そこで得た成果やノウハウをもとに、少しずつ他の業務や部署へと広げながら、徐々に組織全体へとペーパーレス化を波及させていくとよいでしょう。
また、タイミングも重要です。決算期や繁忙期などにペーパーレス化を進めると、業績に悪影響が出かねません。移行時期を見極めたうえで電子化を推し進めるのも、ペーパーレス化のデメリットの防止には不可欠です。
ペーパーレス化はそれでもした方が良い
ペーパーレス化にはデメリットも存在しているものの、紹介したようにそれぞれに対しての改善策もあります。適切な改善策を講じたうえであれば、ペーパーレス化はデメリットを十分に越えるほどのメリットを企業へともたらすでしょう。それが、ペーパーレス化を推し進めた方がよい理由です。
ペーパーレス化には、業務を効率化し生産性を向上させるメリットがあります。資料の準備や検索、承認や決裁など、さまざまな業務の時間の短縮や労力の削減へとつながるためです。残業時間や属人的な業務を減らせることで従業員の負担も軽くなり、社内統制にも寄与するでしょう。紙を使うことにより発生していたコストも大幅に削減可能です。コスト削減は利益向上に少なからず影響を与えます。多くの企業にとってメリットとなりえるでしょう。
一度大きな変革を経験すると、組織全体が時代やニーズの変化に対応しやすくなる点も、ペーパーレス化をした方がよい理由です。実際にメリットや効果を実感できれば、さらなる変革時や新たなシステムの導入時に抵抗感を抱く社員も減るでしょう。変化に寛容な組織へと変わることで、イノベーションが生まれやすくなる点も重要です。中長期的にみれば、ペーパーレス化は企業に多大な恩恵をもたらすため、積極的に推進する必要があります。
ペーパーレス化のデメリットを抑えるおすすめソフト
ペーパーレス化のデメリットを極力抑えるには、導入するソフトやシステムの選択がとても重要です。ここでは、公益法人に特化した会計ソフトと、一般的な企業でも利用できるペーパーレス化のためのソフトを紹介します。
WEBバランスマン
本格的な予算管理を、専門知識不要で行える会計ソフトが「WEBバランスマン」です。導入の際に、高度なITリテラシーも求められません。一部他社のシステムとも連携可能で、組織内で扱われている業務の多くをペーパーレス化できます。クラウド版とオンプレミス版の両方が用意されており、インフラ環境に合わせて選択可能です。高度なセキュリティシステムも構築され、細かな権限設定も可能なことから、安全面のリスクも抑えながらペーパーレス化を進められるでしょう。
勘定奉行クラウド
さまざまな経理業務を最適化し、電子化から保管まで行うことでペーパーレス化を実現するソフトが「勘定奉行クラウド」です。取引や会計帳票、決算にかかわる入力および管理機能を備え、書類の自動読取やデータ化、資金管理などの拡張機能も用意されています。他にもいくつもの奉行シリーズを展開するとともに、それぞれのシステムとの連携も可能です。サポートサービスも充実しており、導入の際の疑問や課題も即座に解消できるでしょう。セキュリティ面でも安心しながらペーパーレス化を進められる点も魅力です。
ペーパーレス化のデメリットについてまとめ
ペーパーレス化とは、これまで紙を使用していた資料や文書を電子化することです。必要性や意義が語られる一方で、ペーパーレス化にはデメリットがあることも否定はできません。導入や運用にコストがかかる点や、ある程度のITリテラシーが求められる点などが、その代表例でしょう。しかし、それらのデメリットは、導入ソフトの選択や社員への研修、スモールスタートなどで改善可能です。デメリットを上回るメリットや効果がペーパーレス化にはあると理解しておきましょう。そのうえで、自社にマッチした会計ソフトを取り入れ、早めにペーパーレス化へと取り組むことが肝要です。