表計算ソフトなどで給与計算している少人数企業の総務の方には、データ書き換わりなどの不安や、法改正への対応に苦労することがあるのではないでしょうか。
給与計算を外注から自社対応することで外注費用の削減をしたいと思っても、自社に合う給与計算ソフト選びに苦労している経営者の方もいらっしゃるでしょう。
今回は無料で利用できる給与計算ソフトの機能や特徴、おすすめのソフトについて解説していきます。この記事を読むと、無料の給与計算ソフトが自社に合うかどうか、どんなソフトを導入すべきかの方向性を検討できますので、是非最後までご覧ください。
無料の給与計算ソフトにできること
無料ソフトと聞くと機能制限が多く、社会保険料控除の自動計算や法改正の自動対応の有無などが気になるのではないでしょうか。しかし、無料のソフトでも社会保険上、税法上の不備なく給与計算が可能です。
具体的には、以下の機能などが備わっているものもあります。
- 給与自動計算
- 計算方法設定機能
- 給与明細の発行
- 法改正に応じたアップデート
給与自動計算機能
従業員の勤怠情報のデータ取り込み、または入力により、給与額が自動で計算されます。
例えば、深夜勤務や休日出勤、時間外(残業)による割増手当、営業手当のような月々の変動給も計算可能です。給与手当の項目を設定でき、各社の給与規定に合わせてカスタマイズもできます。
社会保険料や所得税の控除項目も、給与額に合わせて自動計算し、支払い給与額の計算まで行うことができるでしょう。
計算方法設定機能
各社オリジナルの手当項目が時間外の割増計算の対象かどうかの設定や、給与額の端数処理についても、自社に合わせた設定が可能です。もちろん、労働基準法の範囲内での設定となります。
給与明細の発行
これまで紙で各従業員に配っていた給与明細を、ソフト内で作成でき、オンラインで各従業員に配布できます。
この機能は印刷や各従業員への配布の手間、ペーパーレス化により印刷代の削減にも繋がります。従業員はいつでも手持ちのスマホで確認できるため、双方にとってもメリットです。
法改正に応じたアップデート
社会保険料や労働保険の法改正による、料率変更も自動更新する無料給与計算ソフトもあります。
自動アップデートにより、給与計算において年度の変わり目に起こりやすいミスの発生リスクも抑えられるでしょう。
無料給与計算ソフトのメリット・デメリット
各社の規定や法改正への自動更新など、便利な機能が豊富な無料の給与計算ソフトですが、長所、短所がそれぞれあります。
メリット
- 自動計算化による作業ミス防止と作業時間を削減できる
- 余計な機能が少なくシステムがわかりやすい
- シンプルな機能により、業務の属人化を解消できる
デメリット
- 有人のサポートがない場合がある
- 勤怠データを連携できない場合がある
- 最低限の給与計算に関する経験・知識が求められる
それぞれ、以下で解説していきます。
メリット
・自動計算による作業ミス防止と作業時間を削減できる
ソフトによる自動計算により、表計算ソフトのように計算式が狂うリスクが防止できるため作業ミスの削減ができます。
勤怠管理ソフトを導入している場合、給与計算ソフトとの連携により勤怠データを給与計算ソフトに取り込んで計算ができるため、作業時間も大幅に短縮可能です。人的作業を減らし、作業ミスと作業工数を大幅に削減できるでしょう。
・余計な機能が少なくシステムがわかりやすい
給与計算ソフトには、有給の取得日数や人事評価の管理など、従業員管理が一元的に可能なソフトもあります。多機能なソフトは多機能がゆえに、必要な機能がどこにあるのか把握しづらく、扱いが難しい場合もあるでしょう。
無料の給与計算ソフトは、給与計算機能に特化し作成されているものが多いため、余分な設定作業が少なく、導入ハードルも低いです。
・シンプルな見た目により、業務の単純効率化と属人化解消が期待できる
機能のシンプルさにより、誰にでも見やすく、理解しやすいUIであるソフトが多いです。専門性が求められる給与計算の作業を、単純化、マニュアル化でき、給与計算を属人化できるでしょう。
直感的な操作が可能な点も、使う従業員のストレス軽減にも繋がります。
デメリット
・有人のサポートがない場合がある
ソフトの利用方法に不明点があった際の利用サポートが、無料ソフトでは無い場合が多いです。
有料のソフトではチャットや電話での有人サポートが一般的ですが、無料ソフトではAIチャットやマニュアルのみの場合があります。必ずサポート内容は確認しましょう。
・勤怠データを連携できない場合がある
有料版の給与計算ソフトであれば、勤怠管理ソフトと直接データの連携ができ、一切の手作業がなく連携できるのが多いかもしれません。
一方、無料ソフトの場合はAPI連携ではなく、勤怠ソフトから勤怠データをCSV出力し、CSVデータで取り込む作業が必要となる場合があります。
しかし、勤務体系によっては勤怠管理ソフトだけでは、正しく労働時間が計上できない場合もあります。その場合、CSV出力したデータを修正してから、給与計算ソフトに取り込めるため、一概にデメリットのみではありません。
・最低限の給与計算に関する経験・知識が求められる
無料の計算ソフトは、機能がシンプルであるため、担当者が定期的に必要な作業などを把握しておかないと、作業漏れが起こる場合があります。
月額変更や、労働保険料の年度更新や社会保険料の算定基礎にはいつのデータが必要か、どのように集計するかなど、労務管理の知識が必要となります。
無料の給与計算ソフトおすすめ4選
無料で使える給与計算ソフトを4つ紹介します。個々の特徴については後述しますが、それぞれの特徴について簡単に表にまとめました。
サービス名 | 無料利用人数 | 有人サポート | 有料プランの料金 |
フリーウェイ給与計算 | 5名 | 無し | 1980円/月 |
ジョブカン給与計算 | 5名 | 有り | 6人目から1人追加につき400円/月 |
PayBook | 10名 | 無し | 1,100円/月~ |
円簿給与 | 無制限 | 無し | 完全無料 |
フリーウェイ給与計算
出典:フリーウェイ給与計算
- 利用人数5人までは永久に無料で利用が可能
- シンプルな画面とメニューで誰でも使いやすい
- 無料で年末調整の還付・徴収の計算まで可能
フリーウェイ給与計算は5名までなら完全無料、6名以上は何名になっても、1,980円/月で利用できます。年末調整、算定基礎届、労働保険の年度更新などの書類作成機能も搭載しており、無料版による機能制限はありません。
有料版では有人サポートが受けられますが、無料版ではAIチャットサポートとマニュアルのみとなり、サポート面での差があります。
ジョブカン給与計算
出典:ジョブカン給与計算
- 各社の給与規定に合わせて、詳細な設定が可能
- 状況に応じ必要な作業を表示するToDoリスト機能を搭載
- 途中入社・退職者の表示アシスト機能
ジョブカン給与計算も5名までは永久無料で利用ができ、機能面の充実が魅力です。
ToDoリスト機能は月額変更対象者の手続きやその他状況に応じた手続きが、どの書類をどこにいつまでに提出するかを案内してくれます。また、前月給与との差分表示や、途中入社・退職者の表示アシストなど、給与計算のミス防止に役立つ機能が豊富です。
ソフト上でのデータの保存期間が30日となってしまうため、データのバックアップが必須です。
PayBook
出典:PayBook
- MAC、IPad、widows、Androidタブレット利用環境を選ばず使える
- 10名まで完全無料で利用可能、3,300円/月のプロプランであれば何社でも管理が可能
- 無料のメールサポート
PayBookは10名まで無料で利用ができ、更に1100円/月のプランにグレードアップすると従業員数上限なしで利用できます。3,300円のプロプランは管理会社数も無制限となるため、システムの利用料を抑えたい税理士や社会保険労務士の士業事務者にはピッタリです。
どんな端末でも動作確認が取れているため、複数の手持ちの端末で利用できるため、社内、出先など様々な環境で利用できます。無料でもメールでのサポートが受けられるため、初めて給与計算ソフトを導入する企業も不安が少ないでしょう。
円簿給与
出典:円薄給与
- 従業員が何名に増えても永久無料
- データは2か所の国内サーバーに保管しているため、データの消失の心配がない
- 給与明細のPDF出力も可能
円簿給与の最大の魅力は従業員が何人でも、永久無料な点です。円簿給与の運営は、全て広告収入によって成り立っています。
完全無料ながら、社会保険料の算定基礎、労働保険の年度更新、年末調整の還付・徴収計算も可能です。メールでの一斉配信はできませんが、給与明細のPDF出力ができるため、従業員へデータで配布できます。
メールでのサポート対応も受けられるため、もしもの時にも安心です。
無料の給与計算ソフト導入時の注意点
無料で利用できる給与計算ソフトは、紹介したソフト以外にも多数あります。給与計算のシステム化の入り口としては、導入ハードルが低く、手軽に試せることはメリットです。
しかし、慎重に検討を重ねずに導入すると、思わぬ失敗を招く場合があります。導入に際しては、企業としての方針に応じて、以下の点に注意してください。
- 無料利用できる期間が無期限かどうか
- 従業員数が無料利用枠を超える可能性はないか
- 給与計算、勤怠管理、会計、人事と段階的に複数のシステム導入を検討しているか
- データの保持期間に限りがある場合、バックアップ先が確保できているか
無料の給与計算ソフトで業務効率化の第一歩を
無料の給与計算ソフトには、少人数の企業の給与計算に十分対応できるソフトが多数存在します。しかし、企業の方針に合わせたソフトを選択しなければ、将来的に給与システムの乗せ換えや、不要であった有料プランへの移行が必要となる場合もあるでしょう。
企業の将来の方針や、予算を考慮して、給与計算ソフトのプランと機能を確認したうえで、慎重に検討しましょう。