日本はハンコ文化が長く続いており、ガラパゴス化していると言われています。ただし、国を挙げて電子化を進める動きがあり、ハンコ文化も徐々に解消されつつある状況です。
企業内でも、決裁をおこなう際に紙ではなく電子決裁するケースが増えています。電子決裁をおこなう上で、専用のシステムを導入すれば業務フローの改善など様々な恩恵を受けられるでしょう。
では、電子決裁システムとは一体どのようなものなのでしょうか。本記事では、システム導入のメリットや注意点を交えて、電子決裁システムについて詳しく解説します。
電子決裁とは
電子決裁とは、電子を用いて文書や申請書などの決裁処理をおこなうことを指します。従来は紙の書類があってハンコを押印する形が一般的でした。
電子決裁の場合、電子データ上で容易に決裁できるようになるシステムを導入することで、紙への押印が不要となります。これらは、単純に電子データにサインするだけのものではなく、電子データのやり取りや管理も含めた総合的なシステムのことを指します。
電子決裁サービスには、主に以下2つの形式があります。
オンプレミス型
オンプレミス型とは、電子決裁を導入する際に社内の通信回線やサーバー、システムを構築して自社で運用する形式のことです。オンプレミス型の場合、自社で使いやすいようにカスタマイズできる点が魅力的でしょう。
たとえば、電子決裁システムを導入すると社内の承認ルートを設定する必要がありますが、オンプレミス型の場合はこれらを詳細に設定できるでしょう。また、基本的に社内ネットワークですべてを完結できるため、高いセキュリティレベルを確保できます。
クラウド型
クラウド型とは、オンライン上にあるサーバーにおいて提供されているサービスを、インターネット接続して利用する形式です。オンプレミス型と違って、自社でサーバーやネットワークを構築する必要がなく、誰でも気軽に利用できるメリットがあります。
また、社外であってもインターネット接続できれば利用可能な点も魅力的です。低コストかつ短期間で導入できる一方で、外部サーバーにアクセスして利用するためセキュリティレベルはオンプレミス型と比較すると高くないでしょう。
よって、セキュリティ対策を適切に実施する必要があります。
紙決裁と電子決裁との違い
電子決裁と従来式の紙での決裁を、企業の重要書類の各ステップにおける相違点と比較すると、以下のようになります。
流れ | 紙の決裁 | 電子決裁 |
書類作成 | 電子データで作成した書類を印刷して押印 | システム上の申請フォームに必要事項を入力 |
上長に回覧 | 押印した申請書を上長に回覧して承認依頼する | 申請者がシステム上で申請処理すると自動で上長に通知される |
上長承認 | 受け取った申請書に押印 | システム上で承認 |
役員に回覧 | 押印した申請書を役員に回覧して承認依頼する | 上長がシステム上で申請処理すると自動で役員に通知される |
役員承認 | 書類に押印 | システム上で承認 |
社長に回覧 | 押印した申請書を社長に回覧して決裁依頼する | 役員がシステム上で申請処理すると自動で社長に通知される |
社長決裁 | 受け取った申請書に押印 | システム上で決裁 |
申請者への通知 | 担当者が申請者へメールを送付 | システムにより自動通知 |
書類の保管 | 紙をファイリングして保管 | サーバーなどにデータベースの形式で自動保管 |
以上のように、紙では押印を受けたら次の承認者、決裁者に対して回覧する必要があります。一方で、電子決裁システムの場合はすべてをシステム上で完結でき、通知などもメールやシステム上のメッセージでおこなえるでしょう。
電子決裁を導入することによるメリット
電子決裁システムを導入することで、様々なメリットがあります。特に、以下のポイントが大きなメリットとなります。
- 業務フローの見直しが可能となる
- 内部統制を強化できる
- 場所にとらわれず承認や決裁が可能となる
- 入力ミスや不正防止が可能となる
- ペーパーレス化を実現できる
各メリットの詳細は、以下のとおりです。
業務フローの見直しが可能となる
電子決裁システムを導入すれば、決裁に関わる業務がすべてシステム上で完結します。これにより、紙の文書を決裁する場合と違い、業務フローを容易に可視化できます。
これにより、決裁業務で問題となるポイントを見つけて、改善につなげることが可能です。
内部統制を強化できる
電子決裁システムを導入することで、内部統制を強化できるメリットがあります。内部統制とは、企業が事業活動について健全かつ効率的に運営するための仕組みを指します。
電子決裁の導入に伴い、決裁するためのルール作りが必須です。これにより、社員が順守すべきルールが明確化されて、その結果、内部統制の強化につなげることができるでしょう。
また、電子決裁を導入することで決裁書類を容易に検索できるようになり、外部監査時に書類提出がスムーズになるなどの利点もあります。
場所にとらわれず承認や決裁が可能となる
クラウド型の電子決済システムを導入すれば、インターネットに接続できるデバイスと通信環境を確保できれば、いつでも決裁業務をおこなえます。紙の文書を決済処理する場合、テレワークなどで社内にいない場合は来社するタイミングか郵送して押印してもらわなければなりません。
一方で、電子決済システムを導入すればいつでも決済処理できる点が魅力的です。特に、テレワークにより在宅勤務が主流となっている企業にとって、必須のシステムと言えます。
入力ミスや不正防止が可能となる
電子決済システムを導入することで、入力ミスを防止できるメリットもあります。基本的にシステムに沿って必要事項を記入していくだけでデータを作成し、決裁を受けられるのでミスが発生しにくいのです。
仮にミスがあったとしても気づきやすく、すぐに修正できる点も魅力的です。ほかにも、電子決済システムではアクセスや変更に関する情報が記録されるため、データ改ざんなどの不正がおこないにくい点もメリットとなります。
ペーパーレス化を実現できる
電子決裁システムを利用することで、すべてをシステム上で処理でき、決裁が完了するとデータベース上に記録されます。紙の場合は別途ファイリングが必要となるのに対し、電子決裁では紙が発生せずペーパーレス化を実現できるのです。
ペーパーレス化により、環境にやさしいだけでなく紙代の削減や保管場所を確保する必要がないなどのメリットもあるでしょう。
電子決裁システムを導入する上で注意すべきポイント
電子決裁システムを導入により、メリットが多い反面で導入して失敗するケースも少なくありません。そこで、導入する際に以下のポイントに注意してください。
- 操作性や利便性を考えて選定する
- 付帯機能の有無を確認する
- ランニングコストを考えて選定する
- 自社だけでなく顧客などの意向も加味して選定する
各注意点について、詳しく見ていきましょう。
操作性や利便性を考えて選定する
電子決済システムは多くの種類がありますが、操作性はそれぞれのシステムにより異なります。機能的に優れたシステムを導入しても、操作性が悪いと逆に効率が悪くなり手間がかかってしまう場合があるでしょう。
そこで、操作性や利便性を考えて選定することが重要になってきます。多くの電子決裁システムでは、無料トライアル期間が設定されており、正式導入前にお試しで利用できるため、事前に操作性などをよく確認しておくことをおすすめします。
付帯機能の有無を確認する
電子決裁システムの主な機能は決済に関するものとなりますが、それ以外にも付帯機能が実装されているのが一般的です。たとえば、メッセージ機能やスケジュール機能などがあり、併せて使用するとより業務の効率化を図れる場合が多いです。
そこで、どのような付帯機能があるのかを確認した上で選定すると良いでしょう。
ランニングコストを考えて選定する
電子決済システムは、基本的には有料で提供されている場合が多いです。導入時の初期費用として1万円から2万円程度かかる場合があります。
また、月額として1ユーザーあたり300円から500円程度の費用がかかるのが一般的です。ランニングコストを考えて導入しないと、コストばかりかかって無駄になってしまう場合もあるので注意しましょう。
自社だけでなく顧客などの意向も加味して選定する
電子決裁システムを導入すると、社内の決裁に関する業務フローを劇的に改善できます。ただし、自社だけでなく顧客にも関連する書類がある場合は、電子決裁システムでは対応できないケースがあるかもしれません。
また、顧客によってはハンコ文化が残っていて、必ず紙の文書でしか対応してもらえない場合もあります。よって、自社だけでなく顧客などの意向も加味して選定してください。
電子決裁システムのまとめ
電子決済システムは、ハンコ文化を解消するために最適なツールとなります。特に、テレワークにより在宅勤務する機会が多い企業にとって、欠かせないものとなっています。
電子決済システムを導入することにより得られるメリットは大きなものの、デメリットも少なからず存在します。本記事で紹介した内容を参考に、電子決済システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。