電子帳簿保存法が改正される関係で書類の電子保存が義務化されますが、いつから始まり、どのようなやり方で保存するのかを正確に理解・把握することは難しいと感じる人もいるかもしれません。
この記事では、電子保存が義務化されることについての詳細や保存方法、保存に適したソフトなどを紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。
電子保存の義務化とは
電子帳簿保存法には、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」という3つの保存区分が存在します。そのうち「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」が任意であるのに対し、「電子取引」については電子帳簿保存法改正によって義務化がされました。区分による保存方法は以下の通りです。
電子帳簿等保存
パソコンなどで電子的に作成された帳簿・書類を電子データのままで保存する。
対象:国税関係帳簿(仕訳帳、現金出納帳など)、国税関係書類のうち決算関係書類(貸借対照表、損益計算書など)と自己発行の取引関係書類の写し(見積書控え、注文書控えなど)
スキャナ保存
紙で作成・受領をした書類をスキャンして、画像データとして保存する。
対象:国税関係書類のうち自己発行の取引関係書類控え(見積書控え、注文書控えなど)と相手から受領した取引関係書類(見積書、契約書など)
電子取引
電子的な方法で授受した取引データを、電子データのままで保存する。
対象:クラウドサービスやメールなどで授受された取引関係書類(見積書、契約書など)
電子保存の義務化はいつから?
電子保存はいつから義務化される?
電子取引においての電子保存は、猶予期間を経て2024年1月1日から完全義務化されました。
2020年12月21日に閣議決定された「令和3年度税制改正の大綱」で電子帳簿保存法は改正され、電子取引における電子保存の義務化もされることが発表されました。しかし、翌2021年12月24日の「令和4年度税制改正の大綱」では、「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置」として、2023年12月31日までを電子保存に移行するための猶予期間とすることが発表されます。
これらはどちらも2022年1月1日に施行され、猶予期間を経た2024年1月1日を以て、電子保存は完全に義務化がされました。
参照:財務省「令和3年度税制改正の大綱」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2021/20201221taikou.pdf
参照:財務省「令和4年度税制改正の大綱」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/20211224taikou.pdf
電子保存の義務化に例外はある?
やむを得ない場合に限り、紙での保存(書面出力)が認められています。
2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」においては、「電子保存の要件に従い保存できない相当の理由がある場合」、かつ、「出力画面の提出や提示等の求めに応じれられる場合」に限り、紙に出力した書面(整然とした形式、及び明瞭な状態で出力されたもの)での保存が認められ、2024年1月1日に適用されています。
参照:財務省「令和5年度税制改正の大綱」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2023/20221223taikou.pdf
書類を電子保存するやり方
この章では、書類を電子保存するやり方についてケース別に紹介します。
自社で発行した書類の場合
・電子書類(仕訳帳、貸借対照表、損益計算書、見積書控え、領収書控えなど)
→そのままデータ形式で保存
・紙の書類の写し(見積書控え、領収書控えなど)
→スキャナを使ってスキャン、またはスマホで撮影して画像データ形式で保存
先方が発行した書類の場合
・受領した紙の書類(見積書、領収書など)
→スキャナを使ってスキャン、またはスマホで撮影して画像データ形式で保存
・メールやクラウドサービスなどを通して受領した電子書類(見積書、領収書など)
→そのままデータ形式で保存
データの保管方法
書類は上記のように種類に応じた形にデータ化し、自社サーバー内フォルダ、もしくは証憑収集・保管のシステムへ保存します。また、保存をする際は、「日付・金額・取引先」での検索機能の確保や記録の訂正と削除の履歴を確認できるようにするなど細かい要件があります。合わせて、セキュリティやバックアップ体制、保存領域などの確認も必須です。
電子保存や電子帳簿管理におすすめな会計ソフト
電子保存は、会計ソフトを利用することで簡単かつ安全に行うことができるでしょう。ここでは、電子帳簿保存法に則した電子帳簿管理に特におすすめの会計ソフトを4つ紹介します。
WEBバランスマン会計システム
公益情報システム株式会社の「WEBバランスマン会計システム」は、会計初心者でも本格的な予算管理ができる公益法人向けの高機能会計ソフトです。
「伺書入力機能」が標準装備されているため、入力項目は最低限で作業の大幅な簡易化を実現しています。専門知識がない人であっても本格的なワークフローを始められ、伺書なども電子決済できるほか、PDFも自動で添付されます。電子保存についても、取引関係書類をドラッグ&ドロップするだけで登録時に自動で連係できるでしょう。さらに、検索や確認も簡単にできるようになっています。
詳細
主な機能|収入支出伺書入力、16/20年会計基準出力、高セキュリティ、電子保存、電子決裁、電子帳簿保存法対応
提供形態|クラウド、オンプレミス
動作環境|
OS:Windows10以降
メモリ:8GB以上
ブラウザ:Microsoft Edge、Google Chrome ※クラウド
CPU:Corei3以上のインテルプロセッサ ※オンプレミス
ディスプレイ:XGA(1024×768)以上の解像度 ※オンプレミス
弥生会計
弥生株式会社の「弥生会計」は、業務ソフトとして25年連続で売上1位を誇り、全国で12,000以上の会計事務所がパートナーシップを結ぶ会計ソフトです。アイコンやイラストを多用しているため操作がしやすく、4つのステップで帳簿が完成するという簡潔さが最大の特徴で、銀行通帳明細データも自動で取り込み、AIが自動で仕訳を起票します。
また、パッケージ版、クラウド版の違いだけでなく、会社の規模によってさまざまな種類を用意しているほか、保守サポートプランの種類の充実、業界最大規模のコールセンターで質問等の対応に当たるなどユーザー視点に立っている点も特徴のひとつです。
詳細
主な機能|ナビゲーション、かんたん取引、自動取込・自動仕訳、e-Tax、電子帳簿保存法対応
提供形態|パッケージ、クラウド
動作環境|
OS:Windows10以降、Mac
メモリ:4GB以上(64ビット版/Mac)、2GB以上(32ビット版)
ブラウザ:Microsoft Edge、Google Chrome、Mozilla Firefox
CPU:1GHz以上Core2以上のインテルプロセッサ or 互換プロセッサ(※Windows)、インテルプロセッサ or Appleシリコン(※Mac)
ディスプレイ:WIDEXGA(1366×768)以上の解像度
マネーフォワード クラウド会計Plus
株式会社マネーフォワードの「マネーフォワード クラウド会計Plus」は、会計業務におけるさまざまな悩みを効率化する会計ソフトで、クラウド会計ソフトのなかではトップレベルの満足度を誇ります。データ連携、自動入力、自動仕訳機能などでバックオフィスをスリム化できるでしょう。
仕訳承認機能や権限・ログ管理機能が、上場企業やグループ会社等で必要となる内部統制にしっかり対応する点も魅力です。多拠点対応型なので各社の状況が一目でわかるため意思決定もスピーディーに行えます。
詳細
主な機能|仕訳承認フロー、仕訳の更新履歴を閲覧、仕訳承認機能、権限管理・仕訳ログ管理、電子帳簿保存法対応
提供形態|クラウド、SaaS
動作環境|
OS:Windows 10、Windows 8.1
ブラウザ:Google Chrome 最新版、Microsoft Edge 最新版
端末:金融機関から発行された電子証明書がインストールされているPC
ディスプレイ:WXGA+(1440×900)以上の解像度
PCAクラウド会計
ピー・シー・エー株式会社の「PCAクラウド会計」は、初期費用0円で始められ、群を抜いた数の連携サービスを有する会計ソフトです。14,000を超える様々な業種の法人が利用し、年間稼働率99.9999%という安定性もあります。
「イニシャル“0”プラン」を利用すれば初期費用0円で導入でき、スピーディーに稼働できることが大きな特徴です。「PCAクラウドWeb-API」が他社のクラウドサービスやアプリなどともシームレスに連携することで効率な作業が可能になっています。
詳細
主な機能|PCAクラウドWeb-API、手形期日管理帳票、自動仕分け、部門の階層管理、多種多様な検索条件、電子帳簿保存法対応
提供形態|クラウド
動作環境|
OS:Windows10以降
メモリ:2GB以上(8GB以上推奨)
CPU:Celeron 以上(Core i5 以上推奨)
ディスプレイ:1024×768 以上の解像度
ネットワーク:光回線(100Mbps以上)推奨
電子保存の義務化についてまとめ
電子帳簿保存法における電子取引の「電子保存」は、猶予期間を経て2024年1月1日に完全に義務化されました。やむを得ない場合などの例外はありますが、すべての企業が法律に則り書類を保存しておく必要があるでしょう。
保存方法や区分は法律では複雑に記載されていますが、きちんと理解すれば難しくはありません。自社に適している会計ソフトなどを使って、ぜひスムーズな電子保存を進めてみましょう。