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電子帳簿保存法をわかりやすく解説!押さえておくべきポイントと要件


2023.07.04

「電子帳簿保存法って難しそう」「何から手をつければいいかわからない」とお困りではありませんか。今回は、電子帳簿保存法について、押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。

電子帳簿保存法について知りたい方はぜひ最後までご覧ください。

わかりやすい「電子帳簿保存法」とは

電子帳簿保存法とは、わかりやすくいうと税金関係の書類を一定の条件を満たすことで電子化して保存できる法律です。「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」の略称となります。1998年に施行され、何度か改正が行われてきました。

具体的には、会計ソフトで作成した帳簿をそのまま電子データ保存しておく方法や、紙で受け取った請求書をスマホで読み取って保存する方法などが定められており、略して 「電帳法(でんちょうほう)」とも呼ばれています。

取引先と電子データで請求書・領収書などをやりとりした場合の保存⽅法も対象です。

電子帳簿保存法の対象者

電子帳簿保存法の対象は、国税関係帳簿書類の保存義務者です。わかりやすくいえば、事業を行っているすべての企業と個人事業主が対象となります。

電子帳簿保存法上の区分をわかりやすく解説

電子帳簿保存法上、対象となる書類の保存は以下の3種類に区分されています。

  • 電子帳簿等保存(希望者のみ)
  • スキャナ保存(希望者のみ)
  • 電子取引(法人・個人事業主は対応が必要)

電子帳簿保存法の区分と、改正内容について表にまとめてみました。

区分主な改正事項改正内容
電子帳簿等保存・事前承認制度の廃止
・優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置
・税務署長の事前承認が不要に
スキャナ保存・事前承認制度の廃止
・タイムスタンプ要件緩和
・ペナルティの強化
・タイムスタンプ付与期間が、最長約2ヶ月と概ね7営業日以内となり、受領者等がスキャナで読み取る際の国税関係書類への自著が不要に。
・保存された記録に不正があった場合の重加算税(10%)の加重措置が整備された
電子取引・タイムスタンプ要件緩和
・検索機能要件の緩和
・データの電子保存義務化
・スキャナ保存と同様にタイムスタンプ付与期間が延長
・条件を満たす小規模事業者については検索要件が不要に
・紙ベースの保存ではなく、やりとりの電子保存が義務化
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021005-038.pdf

法改正において、電子取引のデータの電子保存が義務化された点と、事前承認制度の廃止・タイムスタンプの要件が緩和された点が大きなポイントです。

電子帳簿保存法の区分について1つずつ詳しくみていきましょう。

①電子帳簿等保存

電子帳簿等保存とは、会計ソフトを使用して電子的に作成した帳簿や書類を一定の要件のもと、データのままで保管する方法です。優良な電子帳簿の要件を満たした上で、電子データを保存している場合、後でその電子帳簿に関連する過少申告が判明しても過少申告加算税が5%軽減されます。

この措置は、あらかじめ届出書を出していることが前提になります。

電子保存の対象となる帳簿

電子保存の対象となるのは自己がコンピュータを使用して作成する帳簿です。具体的には、仕訳帳・総勘定元帳などの国税関係帳簿、貸借対照表・損益決算書などの決済関係書類、契約書や請求書などの取引に使用する書類が対象となります。

電子帳簿の保存要件

帳簿の電子保存には「最低限の要件」と「優良な電子帳簿の要件」があります。最低限の要件は以下の通りです。

  • システム関係書類等の備付け
  • ディスプレイ・プリンタ等の備付け
  • 税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じることができるようにしておく

優良な電子帳簿の要件(機能性の要件)は以下の通りです。

  • データの訂正、削除、追加の履歴の確保
  • 帳簿間での記録事項の相互関係性の確保
  • 検索機能の確保

②スキャナ保存

スキャナ保存とは紙で作成した書類や取引先から受領した領収書・請求書等について、その書類を保存する代わりに、電子データとしてスキャンして保存する方法です。

紙の領収書等をスマートフォンやデジタルカメラで撮影し、電子データとして保存する方法も認められています。

スキャナ保存の対象となる書類

スキャナ保存の対象となるのは、取引相手から受け取った書類や自己が作成して取引相手に交付する書類(契約書・見積書・注文書・納品書・検収書・請求書・領収書など)です。

スキャナとは・・・書面を電子データに変換する入力装置のうち次の要件を満たすもの

  • 解像度:200dpi(A4サイズで約387万画素相当)以上に読み取りができること
  • 色調:カラー画像※による読み取りができること

※資金や物の流れに直結しない「一般書類」を保存する場合には、グレースケール画像でも可

出先で受け取った領収書等をスマートフォンやデジタルカメラで撮影することで、電子データとして扱えます。

スキャナ保存の要件

スキャナ保存の主な要件は以下の表の通りです。要件を満たし、ペーパーレス化をすすめましょう。

検索性・可視性の確保・検索機能の確保(取引した日付・取引金額・取引先を明確にする)
・帳簿との相互関連性の確保
・見読可能装置、システム関係書類等の備付け
真実性の確保・入力期間の制限
・タイムスタンプの付与等
・一定水準以上の解像度、カラー等によるイメージ化
・ヴァージョン管理(訂正削除履歴の確保)

2022年度の法改正にて、タイムスタンプ要件が緩和されました。改正前は、書類をスキャナ保存する場合、受領者の署名に加え3営業日以内にタイムスタンプを付与する必要がありました。

改正後は、署名が廃止されタイムスタンプも最長約2ヶ月以内の付与で可となりました。

③電子取引

電子取引においては、電子的に授受した取引情報を電子データで保存しなければなりません。所得税・法人税に関する帳簿書類の保存義務者は、取引情報のやりとりを電子データで行った場合、一定の要件のもと、電子データでの保存が必須になります。法改正前は、電子データで受け取った書類をプリントアウトして保管が認められていました。

2022年より従来の紙出力した書面のみ保存する方法は不可となったため、要件を満たして取引データを保存しましょう。

電子取引に該当するもの

電子取引とは取引情報の授受を電磁的方式により行う取引を指します。取引情報とは、取引する上で受領または交付される注文書・契約書・送り状・領収書・見積書などの書類に通常記載される事項のことです。

具体的な取引は以下の通りです。

  • EDI取引
  • 電子メールでのやりとり
  • インターネット・クラウド上でやりとり

電子取引データの保存要件

電子取引データの保存要件については下記をご参照ください。

  • ディスプレイ・プリンタ等の備付け
  • 検索性の確保
  • 改ざん防止のための措置を行う(タイムスタンプor訂正履歴の残るシステム等の利用or改ざん防止に関わる規定)

参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0023003-082.pdf
   https://www.nta.go.jp/publication/webtaxtv/202111_a/webtaxtv_wb.html

つづいて、取引情報のやりとりを電子データで保存するメリットについて詳しくみていきましょう。

電子データで保存するメリット

電子データで書類を保存するメリットをわかりやすく解説します。主なメリットは以下の4つです。

  • 省スペース
  • コストカット
  • 経理の負担軽減
  • セキュリティ対策

1つずつみていきましょう。

①省スペース

帳簿書類の保存期間は、法律にて確定申告より7年と定められています。2022年からは、電子取引においては紙ベースで残す必要がなくなり、同時に保存場所の確保も必要がなくなることから、限られた空間を効率よく使用できるというメリットがあります。

②コストカット

紙ベースで帳簿を作成するには、プリント用紙や印刷代が別途必要かつ整理するためのファイルや保管しておく棚なども必要になってきます。1つ1つの物品は高額ではありませんが、データの電子保存にて確実に経費を削減できます。

③経理の負担軽減

紙ベースで保存している場合、必要な書類を探すには時間がかかりますが、電子データで保存してあれば検索機能の活用にて欲しい書類を素早く見つけられます。さらにクラウドで管理していれば、場所を選ばず書類のチェックができます。

④セキュリティ対策

紙ベースで保存していると、紛失や盗難のリスクを伴います。しかし電子保存では、閲覧制限を設けることでデータの漏洩を防げます。

電子帳簿保存法をわかりやすく解説についてまとめ

今回は、電子帳簿保存法の概要や押さえておくべきポイントについてわかりやすく解説しました。電子帳簿保存法は事業を行う法人や個人事業主が対象です。2022年の法改正により、電子取引を行った際のデータ保存が義務化されたことで、多くの事業者が対応必須な制度となりました。保存方法によって対象の書類が異なり、それぞれ要件を満たして保存する必要があります。保存要件をきっちり把握した上で、メリットの多いデータの電子保存をすすめていきましょう。

電子帳簿保存法について詳しく知りたい方は、ぜひこの記事を参考に制度の概要をつかんでみてください。