帳簿の取り扱いに関して、日本の企業にとって電子帳簿保存法の存在は無視できないものとなっています。この法律は、帳簿や関連書類の電子保存期間を法的に制定しましたが、その一方で、法律の要件を全て満たすのが難しく、猶予期間が設けられています。今回は、この猶予期間について詳しく解説します。電子帳簿保存法の要件を満たすためのステップについても紹介していますので、参考にしてみてください。
電子帳簿保存法の猶予期間とは?
電子帳簿保存法は、日本における帳簿の電子保存に関する法律で、1998年に施行されました。この法律は、企業が経理帳簿を電子データとして保存する際のルールや要件を定めています。具体的には、紙の書類をスキャンして電子データ化したり、最初から電子データとして作成された帳簿などを、一定期間保存することを定めています。「猶予期間」とは、企業が電子帳簿保存法の要件を満たすまでに与えられる期間です。この期間中、企業は法の要件を全て満たしていなくても、電子帳簿保存法の適用を受けることができます。
猶予期間の背景には、電子帳簿保存に必要なシステムや手続きの導入には時間とコストがかかるという実態があり、中小企業など、リソースに限りがある企業に対して、急に全ての要件を強制するのは現実的ではないとの考えから、このような猶予期間が設けられました。猶予期間はどれくらいかというと、電子帳簿保存法が施行された後、初めの数年間に設けられることが多いです。ただし、この期間は一定ではなく、条件よって延長されることがあります。企業は、猶予期間を利用して、改正された電子帳簿保存法の要件を満たすための体制やシステムを整えることが求められます。
例えば、2022年の改正では、電子取引に使用したデータの電子保存の義務化が定められ、その猶予期間は2023年12月31日までとなっています。この義務化は、すべての事業者が対象となっているので、猶予期間中に余裕を持って要件を満たせるように適切な対応をしておく必要があるでしょう。
電子帳簿保存法の猶予期間に対応するステップ
ここでは、猶予期間に対応するために必要なステップを紹介します。
1.法律の理解
電子帳簿保存法の要件を満たすためには、まず法律の内容を正確に理解することが必要です。法の趣旨を把握することで、目的や目標を決めることができます。次に、電子保存するべき帳簿や書類を確認します。販売帳簿、仕入帳簿、現金出納帳などの帳簿から、請求書、領収書、契約書などの関連書類まで、どの書類をどのように保存すべきかの要件を明確に理解することが大切です。
また、帳簿や書類を保存する期間も重要なポイントとなります。多くの帳簿や書類は7年間の保存が必要ですが、書類によっては異なる期間が適用されることもあるので注意が必要です。さらに、保存するデータの形式や品質についても確認することが大切です。電子帳簿保存法では、保存するデータの形式やデータに不整合がないか、変更履歴の管理方法に関する要件も定められています。
2.現状の確認
電子帳簿保存法を適切に行うには、現在の管理方法や保存状況を把握することが大切です。まずは、どのような帳簿や書類が存在するのか、それらが物理的な紙の形式で保管されているのか、それとも電子的なデータとして保存されているのかを洗い出します。この洗い出しを行うことで、組織内の情報の流れや保存方法を明確にすることができます。
次に、帳簿や書類が電子帳簿保存法の要件をどの程度満たしているのかを確認します。例えば、電子データとして保存されている場合、データの形式や品質、変更履歴の管理方法など、法の要件に合っているかをチェックしましょう。さらに、物理的な紙の形式で保存されている帳簿や書類については、どのような手順や方法を採用するか、電子化後のデータ管理や保存方法はどうするかなど、具体的な方針や計画を立てます。
3.必要なシステムやツールの選定
電子帳簿の保存に必要なシステムやツールを選定します。特に公益法人の場合は、計算式が異なる様々な帳簿の会計処理があるため、ソフトによるシステム化がおすすめです。例えば、「WEBバランスマン」では16年会計基準と20年会計基準両方の決算書出力が可能で、アクセス権限も細かく設定できます。また、貸借対照表、正味財産増減計算書、内訳表など、様々な帳票が出力可能なので、書類作業が多い公益法人におすすめのソフトです。
4.システムの導入とデータ移行
システムの導入とデータ移行は細かい作業や検証が伴います。まず、導入前の計画段階でステークホルダーとの連携を強化することが大切です。具体的には、システム導入の目的や必要性、そして新しいシステムの操作方法などの情報を関係者全員が理解し、共有することで、スムーズな移行を可能にします。次に、データ移行においては、ただデータをコピーするだけでなく、移すデータが正確であり、新しいシステムに適切に組み込まれているかの検証が必要です。データの構造やフォーマットが異なる場合、変換や整形の作業が求められることもあります。そのため、データ移行の前に、どのようなデータ構造やフォーマットが新しいシステムで要求されるかを確認することが大切です。
そして、データ移行後には、移行データの整合性のチェックを行います。これは、データ移行中に欠損や重複、誤載が発生しないようにするためのものです。
5.スタッフの教育
新たなシステムを導入することで、業務フローや操作方法が変わるため、スタッフの教育が不可欠です。教育では、新しいシステムの操作方法やシステムを利用した新しい業務フローを教えます。また、スタッフから意見を吸い上げる仕組みを作ることも大切です。新しいシステムを効果的に運用するためには、スタッフ間の情報共有や意見交換が活発である必要があります。
6.定期的な見直し
新しいシステムやツールを導入した後の定期的な見直しを行うことで、データ漏洩や損失のリスクを低減することができます。また、保存しているデータが法令や規則に従った形式であるかも定期的にチェックすることが重要です。また、導入したシステムの動作状況を確認することも大切です。特に、システムのアップデートや新しい機能の追加が行われた際は、その影響を確認し、必要に応じて適切な対応を取ることが求められます。
このような見直し活動は、予め定められた日程に基づき実施するようにしましょう。例えば、月に1回のデータ確認、四半期に1回のシステム性能のチェック、年に1回の法令変更への対応確認など、具体的なサイクルを設定することで、見直し活動の品質と効果を高めることができます。そして、見直しの過程で問題点や課題を発見した場合、情報を共有し、改善策の検討や導入を迅速に行う体制を整えることも大切です。
JIIMA認証と電子帳簿保存法対応の関係
JIIMAは日本の文書管理業界を代表する団体です。この団体は、文書管理の質を確保するためのガイドラインを設定し、それに基づいて企業や製品に認証を行う役割を持っています。そのため、JIIMA認証と電子帳簿保存法は密接な関わりがあります。
品質保証
JIIMA認証を受けた製品やサービスは、高い品質基準を満たしていると認められています。電子帳簿保存法で求められる電子データの品質や信頼性を確保するため、JIIMA認証を持つ製品やサービスを使用する企業は、電子帳簿保存法の法的要件を満たすことができる可能性が高まります。
信頼性の確保
電子帳簿保存法は、電子保存されている帳簿や書類の信頼性を重視しています。この信頼性を確保するためには、スキャナーや文書管理システムなどの機器、ソフトウェアの品質が大切です。JIIMA認証を持つ製品やサービスを利用することで、この信頼性を高めることができます。
ソフトを活用して電子帳簿保存法の要件を満たそう
ソフトを活用することで、企業の電子保存を簡単かつ効率的にサポートしてくれます。保存すべき書類の一覧や保存期間、データ形式など、法律の要件に関する情報が整理され、電子帳簿保存法の要件を満たしやすくなります。また、定期的なバックアップやセキュリティの向上も期待でき、大切なデータの喪失や漏洩のリスクを低減することが可能なため、気になる人は一度試してみてはいかがでしょうか。