電子帳簿保存法では、国税関係の帳簿や決算関係書類、取引関係書類が対象となります。特に、電子取引をおこなう際にはデータとして受け取った取引書類の電子保存が義務付けられている状況です。
紙で発行された納品書は対象外となりますが、適切な対応が求められます。では、具体的にどのような形で納品書を保管すれば良いのでしょうか。
本記事では、電子帳簿保存法に対応した納品書の保管方法を紹介するとともに、電子化によるメリットやデメリットなども併せて紹介します。
電子帳簿保存法における納品書の位置づけ
納品書とは、顧客や取引先に対して商品やサービスを納める際に、納品するものと一緒に取引先に対して発行する書類のことです。納品書には、最低でも以下の5項目が記載されている必要があります。
- 発注者の宛名
- 発行日
- 発行者
- 納品内容
- 合計金額
納品書には発行義務はなく、作成するためにかかるコストを考えて必ずしも納品書が発行されているわけではありません。納品書と似た書類として領収書がありますが、領収書は支払いが完了して契約内容が無事履行されたことを示す書類です。
一方で、納品書の場合は注文内容と納品内容にアンマッチがないかを確認する書類となるため位置づけは異なります。納品書は、先に紹介したとおり法的な発行義務はないものの、納品書を発行した場合は国税関係書類としての扱いとなります。
よって、法人税法においては7年間、会計法においては10年間の保存が必要です。同時に、電子帳簿保存法としても国税関係書類という位置付けで電子保存することができます。
電子帳簿保存法に対応して納品書を保存するための要件
受領した納品書については、紙ベースでやりとりしている場合は特に制約なく保管が可能です。一方で、紙で受領した納品書を電子化したり電子データとして受領した納品書を保存したりする場合は、電子帳簿保存法で定められた要件を満たした保管が必要です。
ここでは、紙の納品書と電子データの納品書それぞれのパターン別に保管するための要件を紹介します。
紙で受領した納品書の保管要件
紙で受領した納品書を電子データ化して保管する場合、主にスキャナでの取り込みにより対応可能です。また、スマートフォンのカメラ機能を用いて撮影して、電子データ化する方法もあります。
各種方法でデータ化するにあたり、重要書類に位置付けられているので、下記の条件を満たさなければなりません。
- 解像度が200dpi以上で保存すること
- 赤・緑・青それぞれで256階調により保存すること
- タイムスタンプを付与すること
- 解像度と階調情報を保存すること
- 画像の大きさに関する情報を保存すること
- 検索機能を確保すること
- スキャンした領収書や帳簿との関連性が確認できること
- 訂正や削除の履歴や内容が確認できること
- 入力した者などの情報が確認できること
- 14インチ以上のカラーディスプレイを備え付けること
- 整然・明瞭な出力が可能であること
- システムの開発関係に関する書類等を取り付けること
- 最長2カ月と7営業日以内に入力すること
電子データとして受領した納品書の保管要件
メールやクラウドサービスなどの方法で受領した納品書は、電子データとしてそのまま保存できます。ただし、以下の要件を満たす必要があります。
- 改ざんを防止するための措置を講じる
- 検索機能を確保する
- ディスプレイやプリンタなどの出力装置を設置する
上記は、受領したデータが改ざんにより内容が変更されないこと、容易に検索してすぐに確認できるための対応が求められているのです。もし、電子データとして受領した納品書の改ざんが発覚すると、重加算税が加重されてしまうので要注意です。
そこで、以下の改ざん防止措置が必要となります。
- タイムスタンプの付与
- 履歴が記録できるシステムの利用
- 改ざんを防止するための事務処理規程の作成と順守
上記で言う検索機能とは、⽇付や⾦額、取引先の項目で検索できる設定にすることが要求されています。
電子帳簿保存法で納品書を電子データ化するメリットとデメリット
電子帳簿保存法に対応して、納品書を電子データ化して保管することで、メリットとデメリットがあります。ここでは、具体的なメリットとデメリットの内容について紹介します。
納品書を電子化するメリット
納品書を発行する側としては、納品書を印刷して送付する際に手間と費用がかかってしまいます。さらに、納品書は法人の場合は7年から10年間、個人事業主の場合でも5年間の保存が必要です。
特に、法人の場合は多くの納品書を発行するケースがあり、保管場所の確保とセキュリティ対策をおこなわなければなりません。そこで、納品書を電子化すればファイリングなども容易におこなえるので、管理コストを減らすことができるでしょう。
ほかにも、会計システムと連動させたり一元管理できたりするメリットもあります。受領する側としても、郵送されるまでのタイムラグがあまりなくリアルタイムで受け取れるので、早急に確認できる点が魅力的です。
納品書を電子化するデメリット
納品書を電子化する上でのデメリットとしては、発行する側が納品書の発行システムを導入するためのコストがかかる点が挙げられます。クラウドサービスとして発行システムを導入しているケースが増えていますが、大半が利用料金として月額または年額で請求されます。
また、実務を担当する方に対してシステム導入の目的や操作方法などを周知して理解を得なければなりません。ほかにも、実際に多くの企業や個人事業主で紙ベースの納品書が欲しいというニーズが多いのは事実です。
よって、実質的に電子化したくてもできないケースもあるというデメリットがあります。
電子帳簿保存法対応で納品書を電子データ保存する際の注意点
電子帳簿保存法への対応として、納品書を電子データとして保存する場合、注意すべきポイントがあります。特に、以下の5つのポイントに注意しながら対応を図ってみるとよいでしょう。
保管期限は確定申告書類の提出期限の翌日から数えて5年または7年間必要
納品書の電子データは、関連する法令すべてを満たす年数を保管しなければなりません。個人事業主の場合、消費税法に従って確定申告書類の提出期限の翌日から数えて5年を超えて保管しなければなりません。
さらに、消費税の課税事業者の場合は7年間の保管義務があるのです。法人の場合も、法人税法に従い確定申告書類の提出期限の翌日から数えて7年間の保管義務があります。
ほかにも、関連法令として会社法があり、10年の保管期間に定められているので、同時に満たす必要があります。
電子データで受領したものを紙に印刷して保存は不可能
納品書を電子データとして受け取った場合、そのまま電子データとして保管するのが鉄則です。もし、電子データを受領して紙に印刷して保管したい場合でも、2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法によって印刷保存は禁止されています。
一方で、紙で発行された納品書については、紙のままで保存しても問題はありません。
取引先との調整が必要になる場合がある
納品書の電子データ化は、自社だけで対応できるものではありません。納品書を電子データ化するにあたっては、取引先や関連部署との調整が必要です。
特に、取引先によっては電子データでの納品書の発行が難しいケースもあるので、事前に対応可否について確認しておく必要があります。また、経費精算などに関連する業務フローを変更するなどの対応も必要です。
データ管理やアクセス制限を徹底する
電子化した納品書は、絶対に改ざんや外部への流出が発生しないような管理が必要です。そのためにはアクセス権限を設定して、必要最小限の方だけがアクセスできるような対応をおこなう必要があります。
さらに、アクセスログが把握可能な監視システムを導入するなどの対応も求められます。
マニュアルの作成と教育を徹底する
納品書の電子化に伴い、改ざん防止などを目的として「事務処理規程」の作成が必須です。また、重要書類と一般書類の区別の方法など、細かなルールを定めたマニュアルを作成して運用することが望まれます。
また、マニュアルを作成してもそれが遵守されなくては意味がありません。そこで、マニュアルの内容を担当者全員に教育して理解してもらう必要があります。
まとめ
納品書を電子データとして保管すると、紙で保管する場合と異なり事務作業の効率化や保管スペースを確保する必要がなくなるなどのメリットがあります。一方で、納品書の電子データ化が難しい企業が一定数存在しており、保存するための要件を満たすための対応が困難な場合も多いです。
電子化する場合は会計ソフトを利用すると効率的に管理ができるでしょう。公益法人向けの会計ソフト「WEBバランスマン」では、帳簿の整理や伺書からのデータ入力を筆頭に、各種の会計基準に対応した決算書出力が可能です。電子帳簿保存法に対応している会計ソフトですので、納品書の電子データ化においても、ぜひWEBバランスマンを活用してみるとよいでしょう。