改正された電子帳簿保存法の施行が始まることを受けて、契約書を電子保存しておく場合のポイントを押さえる必要があります。しかし、電子帳簿保存法がどんな法律で、これから知っておくべきことは何か、よくわからない方もいるでしょう。そこで、電子帳簿保存法の改正後に契約書を電子保存しておくメリットや注意点を解説します。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法は、会社が経理に使う帳簿や書類を電子的に保存することを定めた法律です。電子化することで、情報の検索や管理が簡単になり、企業の業務効率が上がります。そして、電子帳簿保存法は、法改正への対応が必須です。
改正で企業の対応が必要な理由(改正後の変化と罰則)
改正の歴史を順に追っていくと、電子帳簿保存法は2000年代から何度も法律が変わっています。スキャンして取り込むことを認めた2005年に始まり、2015年以降は要件の緩和や整備が行われます。2020年代には、電子取引データ(電磁的記録)を取りやすくなり、2022年の改正案で電子取引データの保存が必要と定められます。その結果、2024年1月の施行では、電子データで受け取った書類は紙への印刷が不可能になるため、各企業は電子取引データを保存できる社内体制を確立する必要があります。
上記に加えて、改正後は、2ヶ月+7営業日以内のクラウド保存ができる場合は、タイムスタンプの付与も必要なくなります。さらに、違反に対する罰則強化(10%の重加算税など)が決められています。
電子データでの保存が義務付けられる事例
電子データでの保存が義務付けられる具体的な例が以下です。
- 電子メール(e-mail)
- ホームページ
- クラウドサービス
- クレジットカード
- EDIシステム
- ペーパレスFAX
電子帳簿保存法では、電子メールやクレジットカードで出力したデータを紙に出力して保存せず、そのまま電子的に保存することが必要となります。
ちなみに、EDI(Electronic Data Interchange)システムとは、企業間でのデータ交換を自動化するシステムです。例えば、注文、請求書、出荷通知などの重要なビジネスドキュメントを電子保存することになります。
保存期間や形式
電子帳簿の保存期間は、法律で電子帳簿の保存期間が7年と定められています。これは、紙の帳簿と同じ期間です。ただし、税務調査などのために必要な場合は、この期間を超えて保存することも可能です。
保存の形式は自由で、自社の業務に最適な形式で電子帳簿を作成・保存することができます。このとき、電子帳簿は、データの改ざんができないように保存する必要があります。
電子帳簿保存法では契約書はどうしたらいい?
電子帳簿保存法における契約書を処理するには、主に2つの方法があります。1つ目は、紙の契約書をスキャンして電子化する方法です。物理的な書類をデジタルファイルに変換する直接的な方法で、スキャナーやスマートフォンのカメラを使用して行うことができます。
2つ目は、電子ファイルをそのままデータとして保存する方法です。電子メールやウェブサイトからダウンロードした契約書など、元々電子的な形式で提供された書類に対して使用されます。
したがって、電子帳簿保存法では契約書をスキャナーで取り込んで電子保存するか、電子ファイルをそのまま保存するかの2択です。最初から電子ファイルの場合は紙での保存ができなくなるため、必ず電子データのみでの保存となります。
また、過去の契約書を電子的に保存するためには、所轄の税務署長に「適用届出書」を出すことが義務付けられています。そのとき、入力期間やタイムスタンプ付与、デバイスのスペックといった条件も同時に満たす必要があります。
契約書を電子保存するメリット
電子保管のメリットは以下の4つが挙げられます。
場所を取らない・必要な契約書をすぐに閲覧できる
まず、紙を置く物理的なスペースを必要としないため、保管場所を確保する課題を解消できます。その上で、電子保存の強みであるデータの検索や情報の共有が簡単になり、業務効率が向上します。
災害で失われるリスクを減らす
電子保存は、災害時に書類が失われるリスクも軽減できます。クラウド保存であれば、インターネット環境を取り戻したときに、いつでも契約書を確認することが可能です。
例えば、火災や水害では、紙の契約書は燃えてしまったり、水に使ったりして読めなくなります。損傷がひどい場合は再現が難しく、重要な契約書が一度失われてしまうでしょう。そういった、いつ起こるかわからないリスクを最小限にできるというメリットがあるのです。
盗難を防ぐ
パスワードや暗号により、セキュリティを高めることで、外部への流出なども防ぎやすくなります。例えば、紙の契約書は管理する環境次第では盗まれることがあります。しかし、電子的なデータはパスワードや権限設定がされていれば物理的に盗むことができなくなります。
もちろん、電子データということはハッキングやウイルスには気をつける必要があります。データを改ざんしにくくして、セキュリティのしっかりとした環境で保存することが求められるでしょう。
環境に優しい
契約書の保存で紙の使用が減るということは、森林資源の保護や廃棄物の削減につながります。紙は再生紙を除けば森の木から作られています。原材料の観点だけでなく、製造工程にも目を向ければ、紙の製造には多くの水や電気が必要ですから、電子保存によって無駄なエネルギーの浪費や自然利用の負担をなくします。
さらに、電子データを紙に印刷するという行為は、紙の無駄遣いだけでなく、インクも多く使用しています。場合によっては契約書郵送の運搬費用もかかるでしょう。そのため、資材やコストの削減にも役立ちます。
電子帳簿保存法に対応した契約書を作る際の注意点
電子帳簿保存法に対応した契約書を作成するときは、電子帳簿保存法の要件をクリアすることに気をつけましょう。契約書を電子帳簿として保存する場合も、法律で要求される要件を満たす必要があります。
具体的な要件については、最初に述べた保存期間の7年や可視性の確保(海外の場合でも日本の拠点で閲覧できるようにしておく必要がある)、契約書の真実性(間違いなく交わした正しい契約書であること)、緩和要件(タイムスタンプの省略や先に税務署へ申請しておく手間の省略)などです。これらを実施するためにも、電子帳簿保存法を確認しておきましょう。
電子帳簿保存法に対応したおすすめソフト
ここでは、契約書の管理・保存に使用するソフトとして、電子帳簿保存法に対応したおすすめを2つ紹介します。
WEBバランスマン
「WEBバランスマン」は、電子帳簿保存法に対応したおすすめの会計システムソフトです。公益法人やNPO法人向けに開発されており、会計業務を効率化し、管理をサポートするための機能を提供しています。
例えば、伺書からの入力が標準装備された「伺書入力機能」や、会計基準の年度が異なる決算書出力が可能な「変換マスタ」などが代表的です。一括入力を可能とする「按分マスタ」もあり、3つの機能が企業を重点的にサポートします。
勘定奉行クラウド
勘定奉行クラウドは、株式会社オービックが提供するクラウド会計ソフトです。中小企業や個人事業主などの会計業務を効率化し、仕訳入力、伝票作成、決算書作成、税務申告、給与計算など簡単に管理するための機能が搭載されています。
特に電子帳簿保存法に対応している部分として、会計以外の契約書を一元管理できる機能を用意していることです。データのセキュリティにも配慮しており、SSL暗号化通信やデータバックアップなどの安全対策があります。
電子帳簿保存法と契約書についてまとめ
今回は、電子帳簿保存法の法改正に対する企業対応が必要なポイントを明らかにし、電子保存のメリットや注意点を取り上げました。電子帳簿保存法の法改正は、社内体制を変更する手間がかかるだけではなく、業務効率の向上など多くのメリットがあります。必要要件をチェックし企業全体で対応できるように体制を整え、管理するソフトを選ぶときは、会計書類だけでなく、契約書にも対応しているかを確認しましょう。