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電子帳簿保存法の事務処理規定とは?


2023.12.01

電子帳簿保存法の対応でどうすべきか迷う点の一つが、事務処理規定と言われます。2024年以降はすべての事業者の実施が求められている要件の一つであるため、知らなかったでは済まされません。今回は、電子帳簿保存法における事務処理規定の概要や、規定に記載すべきこと、規定策定のやり方を紹介します。また、電子帳簿保存法に沿った電子データの扱いが可能な会計ソフトも取り上げますので参考にしてください。

電子帳簿保存法の事務処理規定とは

電子帳簿保存法は1998年に施行が始まった法律で、国税関係の帳簿書類を電子データにて保存することを認めています。当初は電子データとして作成されたもののみを対象としていましたが、2005年の改正に伴い、書類のスキャナ保存が認められ、2024年1月以降は電子保存が必須となります。

なお、電子帳簿保存法では「事務処理規定」を設けることが必須とされる場合があります。電子帳簿保存法の事務処理規定とは、電子帳簿保存法に沿って運営をしていくための、企業が定める規定のことを指します。事務処理規定は、従業員すべてが電子帳簿保存法の意義を理解し、正しく運用するのに役立つでしょう。

事務処理規定が必須となるケース

電子帳簿保存法における事務処理規定が必須となるのが、2022年1月1日以前に作成されている書類を、スキャン・電子データ化して保存するケースです。改正された電子帳簿保存法が2022年1月から施行されたため、それ以降の書類に関しては事務処理規定は必要ありません。一方、法律施行以前の書類を電子データ化する場合は、事務処理規定を作成しておく必要があります。

さらに、特定環境下で電子データを保存するようなケースが想定される場合も、事務処理規定を設ける必要があるでしょう。特定環境下とは、不正や正当な理由がない訂正や削除が行なわれる可能性がある、「真実性の要件」を担保できない環境のことを言います。特定環境下では、企業会計原則の真実性の確保が難しくなるため、事務処理規定の作成が求められます。

事務処理規定を作成しておくメリット

電子帳簿保存法においての事務処理規定の作成は、不正防止といったネガティブな目的のためだけに作られるものではありません。作成しておくことで、運用面でのメリットも出てきます。

まずメリットの一つとして、業務範囲が明確化されるため業務効率アップが見込めるでしょう。事務処理規定では、書類等を電子データとして保存する範囲や保存対象が明確に記載されることになります。電子保存すべきデータの範囲がわかれば、非対象のものに関して作業しなくてよいため、無駄な作業が減り、業務効率も上がるでしょう。事務処理規定に基づき、作業手順などをマニュアル化できれば、属人化の弊害も避けられます。人員が入れ替わった際にもマニュアルがあることで業務手順を説明する必要がなくなり、引継ぎの負担も軽減できるかもしれません。

また、事務処理規定があれば、どのように処理すべきか迷うような書類の判断も容易になります。なお、電子帳簿保存法における電子データ化の対象書類や帳簿は、国税関係のものと電子取引データです。新たな書類が出てくるなどして判断が難しい場合でも、この事務処理規定があれば正しく処理することができるでしょう。

電子帳簿保存法の事務処理規定に記載すべきこと

電子帳簿保存法における事務処理規定に記載すべきことは9項目あります。下記に挙げる項目の記載がないと、そもそも事務処理規定として認められないので注意しておきましょう。ここでは、事務処理規定に必要な項目を挙げるとともに、注意すべき項目を解説します。

・目的
事務処理規定の目的や、どの法律を参照しているかを記載します。

・適用範囲
事務処理規定が適用される範囲や人について記載します。

・管理責任者
事務処理規定における管理責任者を明記します。

・電子取引の範囲
電子取引の範囲を過不足がないように記載します。よくあるものとして、電子メールでやりとりしたりクラウドサービスを利用した請求書、Webサイトやクレジットカード・ICカード・アプリ決済の利用明細、EDI取引などが挙げられます。加えて、立替経費なども電子取引の範囲とされます。事務処理規定への記載にとどまらず、対象となる取引の範囲を従業員に周知しておくことが大切になるでしょう。

・取引データの保存
電子データを保存しておく場所や保存期間などを記載します。なお、オンライン取引の電子データは、最低でも7年間の保存が必要です。さらに、青色申告の事業年度に赤字になった場合は、保存期間が最長で10年に延長される可能性がある点も覚えておきましょう。

・対象データ
請求書や領収書など、対象となる書類の種類を記載します。

・運用体制
管理責任者に加え、処理責任者の名前を明記します。

・訂正削除の原則禁止
基本的に訂正・削除をすることが禁止である旨を記載します。

・訂正削除を行う場合の規定
訂正・削除を行う際の方法やルールを明記します。

事務処理規定を行う手順

電子帳簿保存法の事務処理規定策定のやり方は、国税庁から明確に指示されているわけではありませんが、作成方法とポイントが理解できるひな形は用意されています。まずは、国税庁で公開されているひな形を読み、どのような記載がされているか把握するとともに、自社が明確に定めていない規定がないか確認しておきましょう。場合によっては、事務処理規定を作成する前に、あいまいになっている事務手続きをピックアップし、自社の実情に合ったルールを定めるところから決める必要があるかもしれません。

記載に必要な点を明確化できた後、実際に事務処理規定を作成していきます。記載すべきことで改変が可能な部分の一つが、規定のタイトルです。ひな形では「電子取引データの訂正および削除の防止に関する事務処理規程」となっていますが、こちらは任意のタイトルに変更可能です。事務処理規定は判断に迷った際の指標となるなど、実務での有用性を意識したものにすることが大切になります。もし、タイトルを見て何が書かれているか分かりにくい印象を持つ場合は、企業の実情に合わせて馴染みやすいものに変更すると良いでしょう。

事務処理規定の中で特に注意したい部分が、電子取引の範囲と対象となるデータです。国税庁のひな形には、これまで一般的とされてきた取引がメインで書かれているため、近年登場したクレジットカードやアプリ決済、ECサイトでの購入明細・領収書などは未記載になっています。自社の実情に即した情報を過不足なく記載する必要があるため、取引実態の把握は欠かせないでしょう。

電子帳簿保存法に対応している会計ソフト3選!

電子帳簿保存法対応の会計ソフトは様々ありますが、この章では特におすすめのソフトを紹介します。

WEBバランスマン

公益情報システム株式会社が公益法人向けに開発した、予算管理が特に充実している会計ソフトです。WEBバランスマンでは、公益法人の業務に欠かせない伺書からの入力が標準装備されており、会計業務の効率化が図れるようになっています。また、公益法人財務書類等の作成基準が変わった16/20年会計基準のどちらの決算書の出力もできます。会計や事業で按分が必要な伝票を、一度の入力で行える点も魅力です。

freee会計

freee株式会社が開発したクラウド会計ソフトで、領収書と請求書を電子帳簿保存法に対応した形で電子データとして保存できます。また、経費精算や人事労務サービスなどと連携したり、自動仕訳機能を活用して簡単に帳簿作成ができるため、経理業務効率化にも役立つでしょう。

弥生会計

弥生株式会社が販売している弥生会計シリーズは、20年以上にわたり売上実績トップを記録しており、顧客満足度が高い会計ソフトと言えるでしょう。クラウドで利用できるものと、ダウンロードして使用する従来型のソフトがあり、各企業の環境によって使いやすい方を選択できます。さらに、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証も受けており、決算書の他、固定資産税管理や予実管理もでき、多様な使い方が可能です。

電子帳簿保存法における事務処理規定策定のやり方についてまとめ

電子帳簿保存法の事務処理規定は、作成が必須とされるケースもありますが、自社の対応のやり方を明らかにし社内全体に周知するのに役立つため、予め作成しておくとよいでしょう。国税庁のひな形を熟読して記載すべきことを理解するとともに、自社の取引実態を把握し、対象となる範囲や電子データとして保存すべきものを過不足なくピックアップすると、作りやすくなるでしょう。