電子帳簿保存法が制定されて以来、何度か改正がおこなわれています。このような改正が実施されているのは、電子取引がおこなわれる機会が増えているため、新しい時代に合った法律に変える必要があったからです。旧法に存在した第10条も最近の改正により廃止されています。ここでは、電子帳帳簿保存法の旧10条や改正後の内容について、詳しく解説します。
電子帳簿保存法の旧10条とは
この章では、電子帳簿保存法の旧10条の内容について解説します。
改正された電子帳簿保存法
電子帳簿保存法が施行されたのは1998年のことです。施行されて以来、たびたび法律の内容が改正されています。2022年の1月にも改正がおこなわれ、この改正により従来の10条の内容が削除されました。この改正の影響を受けるのは、電子帳簿を保存する義務がある事業者などです。電子取引の取引情報に関係する電磁的記録を保存する方法が、この改正により大きく変更されました。
削除された旧10条の内容
電子帳簿保存法の旧10条には、電子取引の取引情報に関する電磁的記録の保存方法が具体的に決められていました。こうした取引情報を保存しなければいけないのは、所得税や法人税の納税に関係がある保存義務者です。これらの保存義務者が、該当する電子取引の取引情報に関する電磁的記録を、省令で決められた方法により保存しなければいけないことが、電子帳簿保存法の旧10条には記載されていました。この条文には例外も書かれていて、電子取引の取引情報の電磁的記録を出力して作った書面を保存している時には、上記の規定は適用されないことが決められていました。電子取引の記録に関するマイクロフィルムを保存している場合にも、上記の規定は適用されませんでした。
2022年に改正された電子帳簿保存法では、上記の旧10条の後半部分のただし書きが削除されたものが、第7条に変更されています。その結果として、電子取引の取引情報の電磁的記録を紙に印刷して保存している場合でも、上記の例外は適用されなくなりました。マイクロフィルムも同様に、保存しても例外の適用を受けることはできません。この改正が施行された後は第7条の規定により、電子取引の電磁的記録を保存することが、全ての保存義務者に義務づけられるようになりました。
電子帳簿保存法旧10条の改正後
電子帳簿保存法の旧10条が改正されたことにより、電子取引をおこなった所得税や法人税の納税義務がある事業者は、必ず電子取引の取引情報の電磁的記録を保存しなければいけなくなりました。これまで紙に印刷したものを保存していた事業者は、紙の代わりに電磁的記録を保存すべき義務があります。
法律の猶予期限
この改正の重要なポイントは猶予期限が設定されていることです。2022年の1月から新しい法律は施行されていますが、新法が施行された時から、紙の保存が全て認められなくなったわけではありません。猶予期限が経過するまでは、紙による電子取引の記録の保存も認められています。猶予期間の期限は2023年の12月31日までで、翌日以降は必ず電磁的記録を保存することが義務づけられています。
猶予期限が設定された理由
このような猶予期限が設定されたのは、電子取引の電磁的記録の保存に、全ての事業者がすぐに対応できないと考えたからです。中小企業や個人事業者は保存方法を変更する場合が難しいこともあるので、必要な対応ができるように2年間の猶予期限が設けられました。適用の要件を満たしている事業者だけが、この猶予制度を利用できます。
やむを得ない事情が存在する要件の他に、印刷した書類を保存して、必要な時に提出できるようにしておくことも、猶予を受けるために必要な要件です。しかし、これらの事業者も猶予期間が経過した後は必ず、電磁的記録を保存する必要があります。紙で電子取引の取引記録を保存していた事業者は、法令を守りながら事業を続けるために、必要な対応をそれぞれおこなっています。
電子帳簿保存法対応の会計ソフト3選!
電子帳簿保存法の改正に対応するための最適な方法は、電子帳簿保存法に対応できるソフトを導入する方法です。電子帳簿保存法に対応している優れた会計ソフトが多く販売されているので、こうしたソフトを導入すれば、今まで紙で取引情報を保存していた事業者も、スムーズに電磁的記録の保存に移行できます。ここからは、こうした会計ソフトの中からおすすめのソフトを3つ紹介します。
WEBバランスマン
「WEBバランスマン」は、公益情報システム株式会社が公益法人向けに販売している会計用のソフトです。電子取引の取引情報を紙に印刷して保存していた公益法人も、このソフトを導入することにより、電磁的記録を適切に保存できます。このソフトの魅力は、会計ソフトとしても非常に使いやすいところです。簿記の知識を持ってない人でも、必要な情報を比較的簡単に入力できるでしょう。2度打ちをする必要もないので、多くの時間をかけずに入力が可能です。
2種類の会計基準を使用できるところも、この会計ソフトが公益法人に使いやすいポイントです。平成16年の会計基準の他に、平成20年の会計基準で経理をすることもできます。こうした機能を使用すれば、それぞれの会計基準に適合するように財務書類を作ることもできます。古い会計基準を使用して、補助金の申請をしている公益法人にも使いやすいソフトです。
freee会計
freee株式会社が販売している「freee会計」は、これから電磁的記録の保存を始めたい事業者にも最適な会計ソフトです。このソフトのおすすめできるポイントは、電子取引にも役立つさまざまな機能を利用できることです。紙の書類を撮影してPDFを作成できる機能も利用できます。会計に関する専門的な知識も必要ないので、さまざまな規模の事業者が使用しやすいソフトです。
弥生会計オンライン
電子帳簿保存法に対応している会計ソフトを探している人には、弥生株式会社の「弥生会計オンライン」もおすすめできるソフトです。このソフトはインボイス制度にも対応しているので、インボイス制度の対応も一緒にしなければいけない事業者にも最適です。1年間に限り無料で使用できることもメリットで、実際に使用してから商品を購入するか決めることもできます。無料の期間でも全ての機能を利用できるので、電子帳簿保存法の猶予期限である2023年12月31日までに、必要な対応をすることが可能でしょう。
電子帳簿保存法の他の条の詳細
電子帳簿保存法を正しく理解するためには、10条以外の条文を確認することも必要です。ここからは、その他の条文の内容について詳しく解説します。
電子帳簿保存法の第4条
電子帳簿保存法の第4条には、国税に関係する帳簿書類の電磁的記録を保存するための規定が記載されています。これらの書類を保存する義務がある事業者は、国税関係帳簿の全てもしくはその一部について、電磁的記録を備え付けて保存することができます。こうした方法で、国税関係の帳簿を保存する場合には、省令に規定された方法に従って保存することが必要です。
電子帳簿保存法の第7条
電子帳簿保存法の第7条には、電子取引の取引情報に関係する電磁的記録の保存に関する規定が記載されています。法律が改正される前の旧10条にもこうした規定が書かれていましたが、削除されたことにより、改正後は第7条の規定に従って保存をする義務があります。第7条には、所得税もしくは法人税に関係する保存義務者が電子取引をした時に、省令で決められている方法によって、電子取引の取引情報に関係する電磁的記録を保存すべきことが記載されています。
旧10条にはこの後に適用除外のための条件が書かれていましたが、現行の7条にはこうした適用除外は記載されていないので、全ての保存義務者が電子取引の電磁的記録を保存しなければいけなくなりました。
電子帳簿保存法の旧10条のまとめ
電子帳簿保存法が2022年に改正されたことにより、10条の規定が改正されました。旧10条には、電子取引の取引情報を紙などに印刷しておけば、電磁的記録を保存する必要がないことが書かれていました。法律が改正されたことにより、全ての保存義務者は電子取引の取引情報を電磁的記録で保存することが義務づけられています。それによって、法律の猶予期限に向けて、会計ソフトを導入して対応している事業者が増えています。