電子帳簿保存法では、「電子署名」が使われなくなり、その保存要件が何か知らない人も少なくありません。その背景には、電子署名の保存要件が削除されたことが挙げられます
そこで、電子帳簿保存法における電子署名の概要や削除の理由、タイムスタンプを付与しての保存手順を説明し、電子帳簿保存法に対応したおすすめのソフトを紹介します。
電子帳簿保存法の電子署名とは

電子帳簿保存法の電子署名は、「電子書類が署名者の意思で作成されたことを保証する情報技術」のことです。電子署名をすることで、書類の改ざんを防ぐことができます。特に、電子署名では「誰によって作成されたか」「内容が改ざんされていないか」の2つが記録されます。つまり、作成者を偽って本人になりすます行為が難しくなります。
電子署名は、電子帳簿保存法の保存要件にだけ使われるものではありません。例えば、電子契約書や電子署名付き電子メール(S/MIME)、電子入札などに活用されています。そして、電子署名のルールを定めているのは、「電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)」です。電子帳簿保存法で使われる電子署名は、この便利な認証方法を書類の保存に応用しているに過ぎません。
ただし、電子帳簿保存法で利用する場合、電子署名のみでは、時刻の保証ができません。そのため、保存要件は「電子署名」と「タイムスタンプ」をセットにするのが基本です。
電子帳簿保存法から電子署名が削除された理由と経緯
2015年改正前の電子帳簿保存法では、保存要件の1つに「電子署名」の項目がありました。しかし、2025年現在は、電子帳簿保存法に「電子署名」という言葉は出てきません。これは、2015年に「電子署名」という文言自体が削除されており、書類保存に電子署名が必須ではなくなったことが理由です。
まず、2005年の改正で初めてスキャナ保存が登場し、それに伴って「電子署名」が要件の中に加えられます。当時は、電子保存に対して厳しい要件が課されていたため、効力の期限が短く取得に手間がかかる「電子署名」が必須となっていたのです。実際に、電子署名は最長でも5年ほど、通常は2~3年しか効力がないため、7年の保存期間が必要な電子帳簿保存法では過度なルールだったことがわかります。
そのため、スキャナ保存の要件にあった「電子署名」と「タイムスタンプ」の2要件のうち、「電子署名」の記載が削除され、残った「タイムスタンプ付与」と2015年に加わった「入力者情報」の2つの要件に変わったのです。
タイムスタンプ(別名「長期署名」)は、もともと10年の効力があり、最長で保存期間が7~10年の電子帳簿保存法にも対応することができます。要件が変更された理由は、電子署名は効力期間が短いため、期限のルールがない「入力者情報」に変えてその負担を減らすためです。タイムスタンプ付与は、保存時刻から内容を改ざんできないように時刻認証事業者によって記録する方法です。いつの記録か情報をハッシュ値に変換した上で「真実性」を保証します。
削除された「電子署名」と「入力者情報」の違い
ここでは「電子署名」と「入力者情報」の要件の違いを確認します。
「電子署名」は入力した者の情報が電子認証局で正式に本人だと記録した情報です。それに対し、「入力者情報」は認証事業者の正式な記録でなくても本人と確認できることにあります。国の認証がない一般的な本人確認システムや入力者情報を確認できる情報の備え付けなどです。2024年には、その入力者情報の確認要件も廃止されています。
現行ルールでは、タイムスタンプ付与の「いつ」の証明だけとなったのです。電子署名の場合は「誰が」の情報を認証局で証明し、それとは別に「いつ」の証明が必要です。そのことからも、時間の認証だけで済む要件緩和は、企業の負担を大幅に減らしたといえます。
電子帳簿保存法の電子署名やタイムスタンプが不要な改ざん防止方法

電子帳簿保存法では、2022年の改正時にタイムスタンプが不要な保存要件も登場しています。それがクラウドシステムを使った改ざん防止システムです。書類の内容変更や削除をした記録が履歴に保存されるため、タイムスタンプの代わりになります。
改ざんを防ぐことができる方法なら、タイムスタンプでなくても実際には問題ないのです。そこで法改正によりタイムスタンプが不要な場合の要件が示されています。特に電子取引データは改ざん防止システムの使用でタイムスタンプが不要となる代表的な例です。また、スキャナ保存でも一部の要件でタイムスタンプが不要となっています。
電子帳簿保存法で電子署名から変更されたタイムスタンプ付与の手順
電子帳簿保存法では、電子署名をする代わりにその技術を利用してタイムスタンプを付与する方法が今では使われています。
特に、現行ルールでタイムスタンプが必要になるケースは、書類をスキャンして保存した場合です。それが以下の4つの手順です。
手順1.書類を期間内(2ヶ月と7営業日)に電子保存・スキャンで取り込む
手順2.時刻認証事業者に原本データのハッシュ値を要求(対応ソフトを使った書類のアップロード)
手順3.ハッシュ値に対して「タイムスタンプトークン」を生成し送付される
手順4.保存する電子書類を「タイムスタンプトークン」と一緒に保存する
以上で、タイムスタンプ付与ができます。基本的な流れとしては、時刻認証事業者から「タイムスタンプトークン」を取得して、電子書類をあわせて保存することです。
ただし、改ざん防止システムでは「タイムスタンプトークン」の取得が不要です。そのため、ソフトやクラウドを使用して保存するだけとなり、上の手順が大きく省略できます。
電子帳簿保存法の電子署名が不要なおすすめソフト
以下に、電子帳簿保存法に対応しているおすすめの会計ソフトを紹介します。
中小・中堅企業向け「勘定奉行クラウド」
「勘定奉行クラウド」は、株式会社オービックビジネスコンサルタントが提供する会計ソフトです。改正後の電子帳簿保存法に対応しています。
特に、帳簿・電子取引・スキャナのそれぞれでJIIMA認証を取得しており、ユーザーが自動的に法的要件を満たせる工夫がされていることです。電子帳簿保存法が難しくて要件を守れるか心配という中小企業経営者や経理担当社の方でも安心して導入できます。
公益法人向け「WEBバランスマン」
「WEBバランスマン」は、公益情報システム株式会社の提供する会計ソフトです。公益法人向けにクラウド版とオンプレミス版の2つを用意しています。
オプション機能を使用してJIIMA認証の「ClimberCloud」で電子保存するだけです。この方法で電子帳簿保存法の要件を一通り満たすことができます。タイムスタンプの自動付与やクラウドを使った請求書ダウンロードの状況確認など、電子保存に便利な機能が備わっています。
電子帳簿保存法の電子署名まとめ
電子帳簿保存法では、2015年に「電子署名」の記載が削除されます。以前は、厳格な本人証明と改ざん防止の観点から必須となっていたのです。
2015年には、「タイムスタンプ付与」と「入力者情報」の2つの要件に緩和され、さらに2022年にはタイムスタンプの省略も可能となり、2024年には入力者情報の確認も廃止されます。
このように、法改正は要件の変更を頻繁に起こし、現行法の保存要件がわかりにくくなっています。そこで、よくわからない人でも保存要件をクリアできるJIIMA認証の会計ソフトを選びましょう。