電子帳簿保存法は細かくて面倒なルールが多くあります。そこで、気になるのがルールを守らなかったときの罰則の有無についてです。
本記事では、罰則の有無について紹介し、具体的な罰則の内容や罰則の回避方法、罰則の軽減や適用について解説します。
電子帳簿保存法の罰則の有無

結論から述べれば、電子帳簿保存法には、国税庁がルールで定める罰則があります。
まず電子帳簿保存法の罰則とは、保存義務者が受けるペナルティのことです。書類や電子データの運用ルールを守らなかった際に、受けることになります。
電子帳簿保存法と関係する罰則は以下の3つがあります。
1.青色申告の承認の取消し
1つ目は、青色申告の承認を国税庁が取消し、白色申告に戻すことです。青色申告では、「65万円」の特別控除となるため、その分だけ納税額も減るというメリットがあります。しかし、青色申告がなくなると「65万円」までの特別控除が適用されなくなるのです。つまり、税の優遇が受けられなくなって納税額が増えます。
また、青色申告の優遇として、赤字の繰越や30万円未満の固定資産を経費として申告できるというものがあります。そのため、青色申告の承認の取消しが行われると、税の申告方法や範囲が変わり、税額が普段よりも高くなるリスクがあるのです。
2.重加算税・追徴課税
2つ目は、重加算税や追徴課税により多くの税金を支払わせる罰則です。主に改ざんや隠匿などで正しい税額が税務署に報告されなかったケースで起こりやすく、その際に経費書類などを電子帳簿保存法に反して保存しなかったり、隠したりすることで罰則が与えられます。
「重加算税」は、違反した金額に対して一定の割合で税を割増して支払わせることです。「追徴課税」は、過去にさかのぼって間違いのあった税額に対して修正を加えて支払わせるものです。そのため、電子帳簿保存法では重加算税を10%として、違反者にペナルティを与えます。
3.過料
3つ目は、過料という「会社法」に定められた罰則が適用されることです。電子帳簿保存法は他の国税法と関連しており、「国税関係帳簿書類」の保存が適切に行われなかった場合にも違反となります。
会社法976条では、帳簿の紙書類や電磁的記録に対して、虚偽や隠蔽のない申告を必要とします。そのため、保存の要件を満たしていない場合に会社法への違反も発覚し、100万円以下の過料を科されることがあるのです。
参考:e-GOV「会社法」
電子帳簿保存法違反はどうしたらなる?

電子帳簿保存法の罰則は、法令のルールに違反することで初めてそのリスクが発生します。ここでは、電子帳簿保存法違反になるケースを説明します。
電子取引データの保存で違反になるケース
電子帳簿保存法で違反となりやすい項目に、電子取引を対象とした2024年1月1日以降のルール適用が挙げられます。電子取引のデータ書類は、これまで紙にプリントアウトしての保存も「相当な理由」があれば例外的に認められていました。しかし、改正後の猶予期間終了で、電子保存はすべて電子保存を必要としています。
そのため、電子取引のデータは紙の書類ではなく、電子メールや電子媒体でそのまま保存が義務付けられています。一切のプリントアウト保存に変えることができません。特に、タイムスタンプや改ざん不可のシステム利用は必須となっており、この保存管理体制がない状態での保存は違反となるのです。
スキャナ保存で違反になるケース
電子帳簿保存法で次に違反になりやすいのがスキャナ保存です。スキャナ保存は要件が細かく決まっており、それを外れた保存管理方法はすべて違反となります。特にスキャナを使う場合は紙の書類を電子的に保存するため、原本を捨てた場合には申告上の問題となります。
また、スキャンまでの期間が7営業日となっており、会社の規定上で最大2ヶ月7営業日までの決まりです。保存までの期間や保存のシステム要件などを守る必要があります。
特に「重要書類(契約書や請求書)」は、200dpiの解像度で256階調以上のカラーが必要です。もちろん、それ以外の「一般書類」は要件が緩和されており、上記のルールは適用されません。そのため、重要書類で違反にならないように注意が必要です。
国税関係帳簿・国税関係書類は違反になりにくい
国税関係帳簿・国税関係書類は会計ソフトを使用して作成する会社も少なくありません。最近の会計ソフトは電子帳簿保存法に対応しているケースも多く、ソフトを使用しているだけで任意の国税関係帳簿・国税関係書類の電子帳簿保存法におけるルールも守ることができます。
また紙書類ではなくパソコンで作成する場合、電磁的記録となるため、電子帳簿保存法の対象です。そして、最初から一貫して自分のパソコンで作成した場合は、電子保存のみが認められます。
罰則の加減は個別に決まる?罰則が軽くなるケースもあり
電子帳簿保存法の罰則は、3つが大まかに決まっています。しかし、即座に罰則が適用されるのではなく、慎重に検討されて決まります。そこで、罰則の加減や軽くなるケースについて解説します。
青色申告の承認の取消しはすぐに適用されない
国税庁は違反があった場合に、青色申告の承認の取消しにより罰則を受けさせることが可能です。しかし、違反が見つかったら即座に青色申告の承認の取消されるわけではありません。
電子帳簿保存法の場合、軽度の違反から重度の違反までさまざまあり、その程度を判断し、本当に青色申告にふさわしいかという基準で実際には決まります。取り消しの程度が相当かどうか、例えば、違反に加えて調査への書類提出を拒むケースや税務署長の指示に従わないケース、隠蔽などのケースです。これらが国税庁の承認取消しの基準として定められています。
重加算税の軽減措置
次に、10%の重加算税が軽減されるケースです。まず、保存義務者は、会社の帳簿を電磁的に保存する場合に、電子帳簿保存法に則した保存と運用が必要です。これに違反して納税額などを偽ると、それに応じた重加算税が発生します。この10%の重加算税が、5%に経るのが軽減措置です。
軽減措置が適用されるのは、「優良な電子帳簿」です。優良となる具体的な要件が決まっています。具体的に「訂正削除履歴の保存」「帳簿間の相互関連性」「検索機能の確保」の3つが揃うと優良扱いになります。
例えば、「訂正削除履歴の保存」は修正や削除をした場合に、システムがその記録を保存するソフトの仕様があるなどです。
また、「帳簿間の相互関連性」は仕入帳や売掛帳など、帳簿ごとに連番の数字で管理することです。後から確認しやすくなります。
「検索機能の確保」は取引年月日・取引金額・取引先で検索ができて、日付・金額を範囲指定しての検索が可能なことです。その上で、2以上を組み合わせた項目で検索できることです。この全ての要件を満たすことで5%軽減となります。
電子帳簿保存法に国税庁からの罰則があることのまとめ
電子帳簿保存法は、青色申告の承認の取消しや重加算税などの罰則がある法令です。もちろん、違反してすぐに罰則が適用されるわけではありません。
しかし、信用を失って青色申告の承認がなくなれば、税の優遇が受けられなくなります。また、重加算税などの10%課税もありえます。
ただし、優良な帳簿の場合は、重加算税が5%になるといった軽減措置もあるため、普段から優良な帳簿を目指して作成しておくと、罰則を全部受けずに済むのです。