社内の業務を効率化したり多様な働き方に対応したりなど、企業は業績を上げるためにいくつもの取り組みを試さなければいけません。従来と同様の経営や運営の方法では、時代や価値観の変化に取り残され、やがて淘汰されてしまうでしょう。人手不足が叫ばれる中だからこそ、企業は時代に対応する必要があります。
そうした取り組みの一つとして、「ペーパーレス化」が挙げられることが増えてきました。積極的に取り組み変革を行う企業がある一方で、なかなかペーパーレス化を進められない企業もあります。そこには、いくつもの課題や壁があるからでしょう。本記事では、ペーパーレス化の推進を阻む課題を考え、それらを解決するための方法などについて解説します。
ペーパーレス化とは?
社内で活用する文書や、取引先など社外との間でやりとりする書類を電子化し、紙の使用を減らしたりやめたりする取り組みが「ペーパーレス化」です。ペーパーレス化の対象は幅広く、企業や部署などによっても異なるでしょう。一般的には社内の会議やプレゼンで使われる資料や、取引先との間で交わされる領収書や受領書、契約書などを電子化することを指します。名刺や社員証などをペーパーレス化している企業も珍しくはなくなってきました。紙など物理的に存在しているものの多くは、技術的にペーパーレス化が可能となってきています。
ペーパーレス化のメリット
ペーパーレス化の必要性が叫ばれている理由はいくつかありますが、企業が得られる多くのメリットの存在は無視できません。ペーパーレス化が進めば、文書や書類の作成ややりとりのすべてをデータを用いて行えます。自由度が高まり、時間や場所を問わずに業務にあたれるようになるでしょう。結果、業務の効率化や生産性の向上へとつながります。
紙の文書や書類の保管には、物理的なスペースが必要です。ペーパーレス化が進めば、これらスペースが不要となるため、省スペース化も図れます。用紙代やインク代などの節約にもなり、中長期的には大幅なコスト削減の効果も得られるでしょう。情報の取得や伝達をデータで行うのが当たり前の人たち、特に若い世代にとって、ペーパーレス化を推進している企業の価値は高い傾向もあります。若く優秀な人材が獲得しやすくなるとともに、社員の意欲やエンゲージメントの向上が期待できる点も大きなメリットです。
ペーパーレス化の課題
ペーパーレス化は企業に多くのメリットをもたらしますが、一方で、課題もあります。課題を解決したり乗り越えたりしなければ、社内のペーパーレス化の推進はままならないでしょう。時間や費用を費やしたにもかかわらず、形骸化してしまうおそれもあるので注意が必要です。ここでは、多くの企業が直面する、ペーパーレス化の代表的な課題を紹介します。
社内の理解が進まない
経営層や一部の人たちがペーパーレス化を望んでいても、現場をはじめとした社内の理解が進まなければ意味がありません。ペーパーレス化は、多くの一般社員にもかかわる変革であるためです。現在、紙の文書や資料で業務が行えている組織や、DX化がまったく進んでいないところでは必要性が感じられず、社内での理解度は深まりづらいでしょう。特に、年齢層の高い社員が多い組織に、よくみられる課題です。
また、ペーパーレス化そのものを理解できていない人も少なくありません。電子化とは何か、データでのやり取りとは何を意味するのかなどは、触れたことがなければ即座に理解するのは難しいでしょう。紙の文書や書類がなくなったのち、どのように業務をこなしていくのかが具体的に想像できない人もいます。こうした人たちが多く在籍する企業では、社内の理解が進まないことがペーパーレス化推進の大きな壁となりかねません。
変化に対する抵抗感がある
必要性をある程度感じ、ペーパーレス化の意味を理解していたとしても、変化することに抵抗感を抱く人もいます。こうした人たちの存在も、ペーパーレス化の課題となりえるでしょう。慣れた環境や作業を変化させるのは、確かに容易ではありません。一般的には、それらの変化が大きいほどに、抵抗感も増幅していきます。ペーパーレス化は大半の組織にとっては、まさに大きな変革となる可能性があるため、強い抵抗感を抱く人も少なくないでしょう。そうした人たちが多い組織ほど、ペーパーレス化の壁は高くなります。
導入や運用にコストがかかる
ペーパーレス化の推進の際には、コストも考慮しなければいけません。機器やシステムなどを新たに導入しなければならない企業もあるでしょう。多くの場合、運用を継続するためのランニングコストもかかります。導入や運用にコストがかかる点は、特に、規模の小さな企業にみられる課題です。紙の書類をデータ化するための予算をやりくりしなければならず、しかし、十分な費用が用意できないために、ペーパーレス化が遅れてしまうケースは少なくないでしょう。
業務フローの変更が求められる
ペーパーレス化は、単に紙の書類を電子化するだけではなく、従来の業務フローにも変化を与える取り組みです。セキュリティの観点から、むしろフローの工程が増えるケースもあります。従来の属人的な業務や決定を避けるために、やはり、工程や回覧・閲覧の回数が増える組織も出てくるでしょう。承認や契約などの工程に変化があれば、当然ながら業務フローにも大幅な変更が求められます。この業務フローの変更に対応できなかったり、社員にとって最適な業務フローの構築ができなかったりすると、ペーパーレス化が形骸化しかねません。ペーパーレス化のメリットを最大化するには、業務フローにも十分に注意する必要があります。
セキュリティへの不安が拭えない
ペーパーレス化が進めば、紙の文書や書類を扱う際に発生しがちな改ざんや紛失などのリスクは避けられるでしょう。しかし、データとして保存・活用する以上、インターネットを通じた情報漏洩などのリスクが新たに生まれます。専用のシステムを活用してペーパーレス化を進める場合には、多くの場合は問題とはなりません。とはいえ、セキュリティへの不安が拭えず、それが社内での抵抗感を増幅させてしまうケースは考えられます。重要な障害となり、ペーパーレス化が遅れてしまうおそれがあるため、解決しなければならない一つの課題といえるでしょう。
取引先の状況にも左右される
ペーパーレス化の対象は、社内で活用する資料や文書だけではありません。取引先などとやりとりする領収書などの書類も電子化していかなければ十分なペーパーレス化は実現できず、企業が得る恩恵も限定的なものとなってしまうでしょう。しかし、領収書や契約書などのペーパーレス化は、取引先の状況にも左右されてしまいます。取引先が紙でのやりとりを希望している場合、自社もそれに対応しなければいけません。小規模な企業や事業者とのやりとりの多い組織にとっては、ペーパーレス化の大きな課題となりえます。
ペーパーレス化の課題を解決する方法
ペーパーレス化にはさまざまな課題が考えられますが、自社の課題を洗い出し、それに見合った解決方法を取り入れなければいけません。ここでは、ペーパーレス化の課題を解決へと導く代表的な方法を紹介します。
社内への周知や研修を徹底する
社内の理解が進まない、あるいは、強い抵抗感を抱く社員がいるといった課題は、社内への周知や研修を徹底し、解決していく必要があります。強引にペーパーレス化を推し進めるよりも、徐々に理解を深めてもらい、多くの人が納得したうえで推進したほうが、メリットを最大化できるでしょう。その際には、目的を伝えるとともに他社の事例なども紹介し、ペーパーレス化の意義やメリットを丁寧に伝える工夫も求められます。
スモールスタートで成果を積み上げる
社内での理解がある程度深まったら、スモールスタートを意識してペーパーレス化を始めてみましょう。これも、理解をさらに深めることや抵抗感を拭うことに役立ちます。スモールスタートで取り入れる場合、業務フローの変更も徐々に行われるため、慣れていない社員でもあまり混乱せずに済むでしょう。実際に成果が出れば、ペーパーレス化の必要性をより社内へと浸透させられる点もメリットです。また、ペーパーレス化の導入コストも最小限に抑えられます。効果が生じ、それを実感することで、少しずつ予算も確保しやすくなるでしょう。スモールスタートは、さまざまな課題を解決する、とても有効な方法の一つです。
自社に合った会計ソフトを導入する
ペーパーレス化には、会計ソフトや専用のシステムの導入が欠かせません。自社の目的や規模、事業形態などに合わせた会計ソフトの導入が求められます。自社と相性のよいソフトやシステムの導入により、専門的な知識がなくても書類を電子化でき、さらには、業務の自動化も実現しながらペーパーレス化を進められるでしょう。低コストで導入できるシステムも少なくありません。十分なセキュリティ機能が備わったソフトであれば、安心して運用し続けられます。ペーパーレス化の課題の多くは、適切な会計ソフトの導入で解決できるといっても過言ではないでしょう。
ペーパーレス化の課題におすすめな会計ソフト
ペーパーレス化の課題の解決に貢献してくれるソフトやシステムは多々あります。その中から、とりわけコストパフォーマンスのよい会計ソフトを紹介しましょう。
公益法人には「WEBバランスマン」
公益法人でのペーパーレス化には、「WEBバランスマン」の導入を検討するとよいでしょう。公益情報システム株式会社が開発・提供している、公益法人のための会計ソフトです。収入支出伺書入力や予算管理、決算帳票など、会計処理に必要な機能を備えています。ペーパーレス化に不可欠な、電子保存機能や電子決裁機能も利用可能です。それぞれの機能は操作性に優れ、簡単に管理・活用できるにもかかわらず、高パフォーマンスを発揮する本格的なシステムとなっています。高セキュリティが約束され、安心して重要な情報の保持や管理ができる点も魅力です。スムーズにペーパーレス化へと移行するための優秀なサポート役となってくれるでしょう。
一般法人が使える「弥生会計オンライン」
「弥生会計オンライン」は、クラウドを活用した法人向けの会計ソフトです。簿記などの専門知識がない人でも扱えるような操作性を実現したソフトとして人気となっています。1年間無料ですべての機能が使えるため、コストを抑えながらペーパーレス化の成果やメリットを体感したい企業にとっては導入を検討する価値が高まるでしょう。インボイス制度や電子帳簿保存法にも対応しており、単に紙を電子化するだけではなく、法で定められたルールに沿った形でのペーパーレス化の実現が可能です。自動仕訳や自動転記、自動集計といった機能も備わっているので、業務フローの変更も容易にでき、ペーパーレス化のさまざまな課題の解決にも役立ちます。
ペーパーレス化の課題についてまとめ
ペーパーレス化の推進は、コストの削減や業務の効率化など、中長期的にみると多くのメリットを企業へともたらします。一方で、導入にコストがかかる点や取引先の状況に左右されてしまう点は、ペーパーレス化の課題でしょう。社内に抵抗感や不安を抱く人がいる場合も同様です。それらの課題を解決するには、社内の周知や研修を徹底し、目的やメリットを伝える必要があります。スモールスタートでコストを抑えながら成果を提示できれば、その後は、ペーパーレス化を促進しやすくなるでしょう。
ペーパーレス化の課題解決にもっとも有効なのは、会計ソフトやシステムの導入です。自社に合ったソフトを選択することで、社内の抵抗感や移行の手間、導入コストを抑えつつ、ペーパーレス化のメリットを最大化できます。目的や規模、事業形態などにマッチした会計ソフトを導入し、ペーパーレス化を推し進めていきましょう。