従来と同様の方法が、今後も合理的であったり企業の成長を促したりするとは限りません。むしろ、最新の技術や便利なシステムは、積極的に取り入れることで、企業によりよい影響をもたらすケースが多いでしょう。
社内の業務の電子化も同様です。特に、多くの企業や組織で欠かせない決裁業務の電子化は、働く人たちの負担を大幅に減らし、結果的に大きな利益をもたらす可能性があります。本記事では、電子決裁について解説するとともに、電子決裁の導入事例を紹介しましょう。
それら事例から読み取れる電子決裁のポイントや、多くの企業や組織に選ばれているソフトやシステムについてもまとめます。
電子決裁とは?
電子決裁とは、紙の文書や物理的な押印などで行われていた決裁業務を電子化することを指す表現です。従来の決裁業務は、起案者が稟議書を作成・印刷し、関係者や権限者に確認してもらったうえで、最終的な決裁者が承認・押印して完了という流れで行われてきました。
当然ながら、稟議書などの文書を関係者へと次々に渡し、紙面上で確認や押印をしてもらわなければいけません。この工程のすべてを電子化し、コンピュータ上で行えるような仕組みが電子決裁です。
電子決裁のメリット
決裁業務のすべてをコンピュータ上で行えるということは、パソコンだけではなくタブレット端末やスマートフォンでも稟議書の閲覧や承認作業が可能となることを意味します。わざわざ稟議書を持って関係者を回る必要がなくなり、上司などの都合に合わせて自分のスケジュールを調整するといった手間も不要となるでしょう。
決裁業務のためだけにオフィスにいる、あるいは、出勤する必要もなくなります。回覧や承認の状況も、時間や場所を問わず、即座に把握可能です。本来の業務に集中しやすくもなり、結果的に、業務の効率化が図れ、生産性の向上へとつながるでしょう。
電子決裁の導入事例3選!
電子決裁は、すでに多くの企業や組織で導入されています。ここでは、早くから電子決裁を取り入れ、大きな成果を上げている企業などを導入事例として紹介しましょう。
清水建設株式会社
清水建設株式会社では、本社移転をきっかけに紙媒体の書類の削減が急務となりました。そこで、ワークフローシステムを導入し、電子決裁を取り入れています。結果、書類作成業務において、毎月1200時間ほどの削減効果を得ました。
稟議書の作成から決裁までの期間の短縮も実現しています。また、業務の過程や詳細を容易に把握できるようになり、さらなる業務の改善策を導き出せるようにもなりました。電子決裁の導入によって、業務の効率化を図ろうとする意識が高まった点も大きな効果といえるでしょう。
参照:株式会社エイトレッド AgileWorks 清水建設株式会社のワークフローシステム導入事例
佐賀県
佐賀県は、2014年度から積極的にテレワークを取り入れてきた自治体です。決裁業務の電子化はさらに早くから導入しており、それがテレワークの促進へとつながりました。
しかし、システムの関係上、職員からの不満が出たり、一部の決裁業務では紙が使われ続けたりしていたケースもあります。その後、さらに使い勝手のよいシステムへと移行したことをきっかけに、電子決裁率が上昇しました。
時間や場所に縛られれず決裁業務が行えるようになり、テレワークを含めた働き方の幅が広がった点を大きな成果としています。また、決裁の状況が可視化されたことも無視できないメリットでしょう。
参照:自治体通信ONLINE
株式会社フェリーさんふらわあ
長距離フェリーを運航している「株式会社フェリーさんふらわあ」では、オフィス移転に伴って電子決裁システムを導入しています。従来の決裁業務では2〜3日、あるいは1週間以上かかっていたケースも少なくありませんでした。いくつかの電子決裁システムを試し、その中から高い年齢層の従業員でも使いやすく、コストも可能な限り抑えられるものを選んでいます。
結果、申請から決裁まで1日で済むケースも出てきました。加えて、決裁のルールなどがナレッジとして従業員に共有・蓄積され、リテラシーの向上にもつながっています。
利便性だけではなく、従業員の意識そのものも向上した事例といえるでしょう。
参照:サイオステクノロジー株式会社 Gluegent 導入事例
電子決裁の導入事例から学ぶ注意点
決裁業務を電子化すること自体は、そこまで難しいものではありません。しかし、効果を高めるには工夫したりポイントを押さえたりする必要があります。ここでは、電子決裁の導入事例から学べる、決裁業務を電子化する際の注意点やポイントをまとめましょう。
ソフトやシステムの選択が重要
電子決裁を導入した企業や自治体などの事例をみると、システムの重要性がうかがえます。電子決裁が行えるソフトやシステムの選択を間違えれば、業務の効率化は進まず、生産性もむしろ下がってしまうおそれがあるでしょう。
システムを変更したことで、業務の電子化が加速した事例も少なくありません。導入の際にはいくつかのシステムを比較検討したうえでの選択が求められます。
現場の理解や意識もポイント
決裁業務には、さまざまな役職の人がかかわります。特に現場の人たちにとってはストレスとなりかねない業務のため、導入の際には、そうした人たちの理解や意識にも注意を払う必要があるでしょう。
研修なども実施し、システムの使い方も浸透させていかなければいけません。正しい順序で導入できれば、従業員の意識だけではなくリテラシーの向上にもつながります。形式的に導入するのではなく、関係するすべての人に配慮しながらの導入と運用がポイントです。
電子決裁のおすすめソフト
電子決裁が可能なソフトやシステムはいくつもあり、その中から自社に合ったものを選択しなければいけません。ここでは、電子決裁に有用なソフトやシステムを紹介します。
WEBバランスマン
公益法人が電子決裁のシステムを取り入れるのであれば「WEBバランスマン」は選択肢の一つとなるでしょう。会計ソフトのため、基本機能は決算書の出力や予算管理などに関連したものとなっています。
それに加えて、オプションとして電子保存機能や電子決裁機能が用意されており、ワークフローシステムとしての活用も可能です。会計システムとの連携により、オフィスワークの大幅な効率化が図れます。専門知識がなくても使用できる設計となっている点も魅力でしょう。
コラボフロー
「コラボフロー」は、誰もが簡単にワークフロー業務を行えるシステムです。エクセルで作成した申請書などをそのままの形式でフォームとして変換できるため、システム導入後も視覚的に戸惑うことがありません。
稟議書の作成や経路設計も直感的に行え、担当者のリテラシーに関係なくワークフローが構築できます。外部システムとの連携も可能なため、さまざまな業務の電子化や効率化が図れる点も魅力です。大幅なペーパーレス化も実現し、コスト削減の効果も得られやすいでしょう。
IPKNOWLEDGE 文書管理
「IPKNOWLEDGE 文書管理」は、富士通株式会社が提供する電子決裁も可能なシステムで、自治体にも取り入れられている文書管理ツールです。文書の起案から決裁を経て、保存あるいは廃棄に至るまでの流れをシステム化しています。役所内のルールにのっとった形での決裁業務が可能であり、大幅な業務効率化を実現できるでしょう。
IPKNOWLEDGEには財務情報システムや情報公開システムなどもあり、それらとの連携も可能です。直感的な操作性も備えているため即座に使いこなせ、電子化への負担も軽減できます。
電子決裁の導入事例についてまとめ
従来は紙とハンコで行われており、時間も手間もかかっていた決裁業務を、コンピュータ上で誰でも手軽に行えるようになってきました。いわゆる、電子決裁です。すでに多くの企業や組織で取り入れられている電子決裁ですが、導入の際にはワークフローシステムなどが不可欠となります。
使用するソフトやシステムの選択は、業務の効率化や扱う人たちの負担の程度にも大きな影響を与えます。自社に合ったものや、他のシステムとの連携ができるもの、操作性に優れたものなどを選ばなければいけません。他社の導入事例なども参考にしながらシステムを選択し、決裁業務の電子化を進めていきましょう。