従来なら紙に必要なことを記載し、ハンコを押したうえで決裁を行う紙を使った決裁が当たり前でした。しかし、コロナ禍などでテレワークが一般化していくと、紙ではなくオンラインの電子決裁を導入する起業や団体が増えてきました。
今回は、電子決裁の目的や電子決裁のメリット、デメリットを紹介していきます。
電子決裁とは
電子決裁とは従来であれば紙の申請書類に対してハンコを押したりサインをすることで決済していた作業を電子化で行うことです。そのためハンコを押す方法以外に電子的な方法を使ってパソコンやスマートフォンで決裁が容易にでき、時間や場所に縛られることなく、効率的に決裁業務ができるため、急速に広まっているシステムです。
電子決裁の目的は
電子決裁の目的は、決裁のスピードアップにつながります。書類の申請から決裁、保管等のやり取りがオンライン上で行えるため、ペーパーレスにもつながります。
また紙の決裁の場合は承認を見落としたり、記録の改ざんが簡単にできたりしますが、電子決裁はそういった問題を防ぐことができるでしょう。
電子決裁の方法とは
電子決裁は従来の紙による決裁を、すべてパソコンやスマートフォンなどのオンライン上で行うのが大きな特徴です。所属している企業や団体によって多少の違いはありますが、おおむね次の手順で行われます。
- 担当がパソコンで稟議書を作成
- 作成した稟議書をオンラインで上長(課長・部長)に申請
- 上長がオンラインで承認・回覧
- 役員がオンラインで承認・回覧する
- 社長がオンラインで承認
以下、詳細をみていきましょう。
担当がパソコンで稟議書を作成
決裁すべき稟議書を担当者が作成します。オンラインでの決済のため、パソコンやタブレットなどで必要書類を作成します。
作成した稟議書をオンラインで上長に申請
作成した稟議書は印刷することなく、オンラインで上長に申請します。上長は一般社員であれば課長、課長の場合は部長という風に、組織の下から上への申請はすべてオンラインでおこなうことができます。
上長がオンラインで承認・回覧
部下からオンラインで申請があった内容を上長がパソコン上などで確認し、問題なければ承認して回覧します。同様に、課長の承認のあった稟議書は部長のところでオンライン上で承認して回覧を進めます。
役員がオンラインで承認・回覧する
部長などの上長から、担当役員に稟議書が回ってきます。基本は上長と同じでオンライン上で回ってきた書類を承認して回覧するだけで承認ができるでしょう。
社長がオンラインで承認
最終的な決済を行うのが社長です。役員から回ってきた稟議書で問題がなければ社長が承認し、電子決裁は完了します。
電子決裁の種類は
電子決裁には、大きくふたつの種類があります。
- オンプレミス型
- クラウド型
それぞれの違いを、以下に詳しくみていきましょう。
オンプレミス型
オンプレミス型は、社内にサーバーを設置して通信回線を構築し、自社でシステム化して利用するタイプです。自社でのみ運用するので、会社独自の機能を細かく自由にカスタマイズできるメリットがあります。
中央の自社サーバーと各部署のパソコンで利用するため、社内であればセキュリティ面では安全ですが、出先など外からやり取りする場合は、設定が必要です。ただ自社でサーバーを用意するハード面と、システムを構築するためのソフト面、さらに自社で運用管理する際に、作業の負荷やコストがかかるというデメリットもあるでしょう。
クラウド型
クラウド型は、インターネットを介したり、オンライン上のサーバーのシステムを使って利用する形態です。月額制で利用できるようになっており、アカウント登録が終わればすぐに利用できるので、オンプレミス型のようなコストや負荷がかからないメリットがあります。
ただし、企業ごとに特化していないため、機能面での制限がかかること、セキュリティ面ではどうしてもオンプレミス型と比べると弱くなる場合があります。
その代わり初期費用が安く、サーバー側が自答的にアップデートするなど機能が改良されていくなどのメリットもあるでしょう。アカウントとパスワードさえあれば、場所も時間も選ばないため、一般的な企業が電子決裁システムを利用する際にはクラウド型のほうが主流になりつつあります。
電子決裁のメリットは
電子決裁は従来の紙による決済と比べて様々なメリットがあります。詳しくみていきましょう。
ペーパーレス化ができる
電子決裁の場合は、すべてオンライン上で行います。書類をわざわざプリンターで印刷する必要もないので、ペーパーレス化できます。
紙の決裁の場合は紙代やプリントのインク代の他、印紙が必要な場合がありますが、電子決裁の場合は印紙代もカットできるのが大きなメリットです。さらに紙の書類がオフィスを圧迫することなく、オフィスのスペースを縮小化できるでしょう。
無駄な時間を削減できる
紙の決裁の場合は、印刷するだけでなく印刷した書類を上長がいる場所までもっていかなくてはなりません。全国展開している企業の場合だと郵送なども考えられますが、いずれにしても決裁を行うまでに時間がかかってしまいます。
オンライン決済であれば瞬時に上長に書類を送ることができるので、決裁までの速度が早くなり、無駄な時間の削減につながります。
不正や記入ミスが防げる
紙の決裁の場合は、ミスに気づくとまた紙を印刷しなおすなどの無駄な時間が必要になります。しかし、電子決裁のシステムを導入すると、入力フォームのようなもので入力して作成するので、ミスを事前に防ぎ易くなっています。
それでもミスをした場合でも、紙を印刷する必要もなく修正が簡単です。また紙の場合は不正を行なう恐れがありますが、オンラインであれば記録が残るために不正や改ざんを未然に防ぐことができるでしょう。
証跡が残り印鑑が不要となる
電子決裁では証跡が残るため、紙の決裁による印鑑が不要です。ただし、契約書を電子化する場合には、印鑑を押したのと同じ法的効力がある電子署名を用います。
電子署名とタイムスタンプを刻印することで有効な契約書となり、文章作成後の改ざんが防げます。
内部統制が強化できる
電子決裁を導入することで、内部統制が強化できます。電子決済を導入する場合には全社的に決裁ルールを明確化する必要があり、細かいルールを決める必要があります。そして、結果的に社員の守るべきルールが明確になるため、内部統制が強化できるメリットがあります。
さらに、決裁書類が容易に探せるようになるため、外部や内部の監査が入った場合の書類提出も素早く行えるでしょう。
電子決裁のデメリットは
残念ながら電子決裁にもデメリットや問題点はいくつか存在します。以下で紹介していきましょう。
社内ルールや業務フローの見直しが必要
紙の決裁のころに伝統的に決められていた社内のルールや業務のフローを、電子決済の導入により根本的から見直す必要があります。そのことにより、電子決裁に異を唱える社員が現れる恐れもあるでしょう。
電子決裁を導入するためには、どの程度の影響があるかあらかじめ確認しておかなければなりません。電子決裁導入が決まれば、マニュアルの作成や社員への周知を徹底し、業務フローの見直しを行いましょう。
システムを導入するのに必要なコスト
電子決裁システムを導入するのには、どうしてもコストが必要です。クラウド型はオンプレミス型よりはコストが低く抑えられますが、それでも多少なりともコストが発生します。
そのため、電子決裁を導入するときには自社にとって必要な機能などをあらかじめ明確にしておき、その機能を使えるシステムを導入する必要があるでしょう。
すべての契約で電子決裁を使用できるとは限らない
年々、電子決裁を行う企業や団体が増えて来ていますが、すべての企業が導入しているわけではありません。
契約している取引先の中には電子決裁を認めないところもあるため、すべてが電子決済できると考えずに、電子決裁ができない取引先のために紙を例外的に用いるなどの柔軟性が必要です。
電子決裁は自治体で進んでいる
電子決裁は民間企業の他自治体でも進んできています。ひとつの事例としてコロナ禍の時にテレワークを導入したことがきっかけとなり、文章管理と決裁を電子化する動きを加速化し、部署間での調整や合意を行いながら、急速にペーパーレス化が進んでいます。
また、課長クラス以上の職員にタブレット端末を配布するなど、公務員をIT化や電子決裁に慣れさせていく動きがあり、急速に自治体の電子決裁化が進んでいるのです。
電子決裁まとめ
電子決裁は、紙に申請書類を書きハンコを押して提出する従来型の決裁に代わって広まりつつある決裁方法です。
ペーパーレス化が実現し、決裁までの速度が速く、不正や改ざんが未然に防げて内部統制に役立つなどのメリットが大きい反面、システム導入のコストや従来の社内ルールや業務フローを見直す必要があります。
それでも確実に電子決裁を導入している企業・団体は増えてきており、自治体でもその動きが顕著にみられます。