経理業務の中で、管理の手間がかかる作業の一つが領収書の整理と言えるかもしれません。実は、領収書を含む国税書類は電子保存することが認められています。
ここでは、領収書の電子保存とはどのようなものなのか説明した後、要件やメリット、電子保存のやり方を紹介していきます。また、領収書を電子保存するのに適した会計ソフトも紹介しますので、選定の際の参考にしてください。
領収書を電子保存するとは?
領収書の電子保存とは、紙に印刷された領収書やレシートを電子データとして保存すること、もしくは電子取引データをそのまま電子的に保存することを言います。領収書の電子保存は電子帳簿保存法で認められており、要件にかなった方法で電子化しておくことが必要です。
電子保存の要件は変化している
電子帳簿保存法は何度となく改訂され、国税に関わる証憑は電子保存の方向に進んでいます。例えば、電子保存の対応自体は任意でしたが、2022年の法律改正により電子取引データの保存は義務化されました。このことにより、領収書やレシートが電子取引データである場合、電子保存が必須となります。
なお、企業の取り組みの遅れなどを考慮し、2023年12月末までは電子取引データを紙に印字して保存することが認められていましたが、2024年以降、この経過措置は廃止されました。電子取引データ以外の紙の証憑の電子保存は任意ですが、次の項目で取り上げるメリットを考えて、紙の領収書やレシートを電子保存する企業が増えています。
領収書を電子保存しておくメリット
紙の領収書やレシートを電子保存しておくメリットは多々あります。ここでは、5つのメリットに着目して説明していきます。
検索して簡単に探せる
ファイリングした領収書を見返す場合は、取引日にあたりを付け、ない場合は前後の証憑を1枚ずつ探すしかないでしょう。特に日付が古い領収書を見つけるのは大変です。
一方、電子保存していれば、領収書の日付や発行元などの情報を検索項目に入力し、簡単に探せるでしょう。監査などで早急に特定の資料を提出しなければならない場面でも、電子保存していれば焦らずに正確な情報を取り出すことができます。
紛失や改ざんのリスクが減る
紙の領収書は持ち出した時に誤って落としたり、盗難や災害などで紛失したりする危険があります。また、署名や押印を改ざんして偽の証憑を作ることもできてしまいます。一方、電子保存した場合は物理的に証憑がなくなる心配はなく、タイムスタンプを付与できるため改ざんリスクを最小限に抑えられます。
経費精算をデジタル化できる
領収書を電子保存できれば、経費精算のデジタル化も可能になります。従業員は領収書をスマートフォンなどで撮影し、そのデータをシステムを通して経理部門に送ることで経費精算が完了します。従来の経費精算よりも手間が省け、自分の好きなタイミングで処理できるため、従業員からの協力が得やすいのがメリットです。
経理担当者の業務負担が減る
2022年の法律改正により、相互けん制や定期検査などの「適正事務処理要件」が廃止されたため、紙の証憑と画像との突合作業が必要なくなりました。せっかく電子保存しても突合作業で時間を要していたため、この業務がなくなったことで経理担当者の負担はかなりの程度軽減されました。さらに、電子取引データから自動的に仕訳を起こせる会計システムも多く出てきており、仕訳業務の効率化も実現できます。
管理が簡単になる
領収書は、法人税法により、事業年度の確定申告書提出期限から7年間の保存が義務付けられています。「繰越欠損金控除」の適用を受ける場合は、保存期間が10年になるため、さらに長い時間証憑を取っておく必要があります。
紙の領収書では、ファイリングして専用の保管スペースで保存するなど管理に手間がかかるでしょう。保存状態によっては証憑が劣化する危険があるため、保管場所にも気を遣います。領収書を電子保存すれば原本は廃棄できるため、ファイリングや長時間の保管は必要ありません。領収書管理の観点で考えると、電子保存のメリットは大きいと言えるでしょう。
領収書を電子保存するやり方
領収書を電子保存する方法は、主に2つあります。
スキャナでの保存
紙の領収書やレシートは、スキャナを使うか撮影するなどして保存できます。なお、スキャナでの保存は、領収書が発行されてから2ヵ月と7営業日以内の入力が求められます。入力の際には、改ざん防止のため、タイムスタンプを付与しなければなりません。
また、読み取り解像度は200dpi以上と定められています。カラーでのスキャンが必須で、削除や訂正は作業者を特定できるようにしておかなければなりません。さらに、スキャンした領収書と帳簿の関連性を明確化する必要があります。検索機能を設けることも要件に入っています。
電子取引データを保存
取引先からのメールに添付されていたり、Webからダウンロードした領収書は、そのまま電子取引データとして保存します。改ざん防止のためのタイムスタンプ付与や検索機能を設けることは、スキャナでの保存と同様、必要です。
なお、領収書を電子保存する際の注意点は以下の通りです。
電子取引は紙での保存が認められていない
電子的にやり取りされた領収書を紙で保存することは、2024年からできなくなりました。電子メールで受け取った、あるいはインターネット上でデータをダウンロードした領収書は電子データのまま保存しなければなりません。
不正行為を行った場合は罰則がある
スキャナ保存を行った領収書を含む国税関係の書類改ざんが発覚した場合は、重加算税が課せられます。なお、電子データに関係する重加算税は、通常よりも10パーセント上乗せされます。電子保存の要件は緩和されていますが、その分、不正抑止の取り組みは強化されていると言えるでしょう。
電子保存や電子帳簿管理におすすめな会計ソフト
電子保存や電子帳簿管理は、それらに対応する会計ソフトを用いると作業効率をアップできるでしょう。ここでは、機能的に優れた2つの会計ソフトをご紹介します。一つ目は、公益法人向けのソフト、もう一つは一般企業向けのソフトになります。
WEBバランスマン(公益情報システム株式会社)
電子帳簿保存法の要件をすべて満たしている公益法人向けのソフト「WEBバランスマン」には、オプションとして電子保存機能があります。取引書類をドラッグアンドドロップするだけで電子保存が可能になり、検索や確認も簡単です。同じくオプションの電子決済機能を使えば、会計処理の効率化が進みます。権限は担当者別に細かく設定でき、データ改ざんリスクの軽減に役立ちます。
マネーフォワード クラウド会計(株式会社マネーフォワード)
電子帳簿保存法に適用している「マネーフォワード クラウド会計」は、領収書を電子保存できるだけでなく、自動仕訳にも対応しています。データを取り込む際に仕訳が作られるため、金額の入力ミスや入力漏れなどのヒューマンエラーを防ぐことができます。会計処理の効率化に役立つ会計システムと言えるでしょう。
領収書を電子保存するやり方やメリットのまとめ
領収書の「電子保存」とは、紙の領収署は電子データに、電子取引のデータはそのまま電子的に保存することを言います。電子保存をしておくメリットは、保管・管理の手間軽減や会計処理の効率化など多岐にわたります。
なお、紙の領収書の電子保存はスキャナを使います。さらに、電子保存した領収書は容易に検索できるようにし、適切にタイムスタンプを付与して改ざん防止措置を取らなければならないでしょう。