昨今では会計ソフトなどを使って作成した電子帳簿を利用する企業が増えています。電子帳簿利用の際に注目すべき法律が「電子帳簿保存法」です。本稿では、重要条文や注意する点などを通して、この電子帳簿保存法について詳細を解説していきます。
また、電子帳簿保存法に対応しているおすすめの会計ソフトの紹介もします。会計ソフトへの切り替えを検討している方は、ぜひ最後まで目を通してください。
「電子帳簿保存法」とはどんな法律?
「電子帳簿保存法」とは、国税(所得税法・法人税法・消費税法など)についての書類や帳簿を電子データ(電子帳簿)として保存しておくことを認め、その際の規則を定めている法律です。これらの正式名称は、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」であり、略して電子帳簿保存法、あるいは電帳法などと呼ばれています。
電子帳簿保存法は1998年3月30日に成立し、同年7月1日から施行されました。そしてその後、時代の変化に合わせて幾たびも法改正を繰り返してきました。2024年時点における最新の改正は、令和5年度の税制改正(2023年)です。
電子帳簿保存法で特に重要な条文は?
以下において、電子帳簿保存法の重要条文を紹介します。
法律の趣旨(第1条)
第1条は、電子帳簿保存法がなぜ制定されたかの趣旨が示される条文です。”情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等のため”法律が制定されたと、その趣旨を説明しています。
さらに本法律における”電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法”が、「所得税法」や「法人税法」などの国税についての法律の特例であることを示しています。なお、ここで記載されている「電子計算機」とはコンピューター(パソコン)やスマートフォンなどといった、電気的な信号を用いた情報処理機器を指しています。
電子データの保存について(第4条)
電子帳簿保存法の第4条では、「電子データの保存」について記されています。まず1項では、”自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合”において”当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をもって当該国税関係帳簿の備付け及び保存に代えることができる。”と規定しています。
この第4条1項は、最初からパソコンなどの電子計算機で帳簿・書類などが作成されている場合、それらをデジタルデータとして保管すれば、「国税関係帳簿および書類の保存義務」を果たしていることになる、という意味です。
“最初の記録段階から一貫して”とは、帳簿を備え付けて記録の保持を開始した、最初から終わりまでのことです。この期間のすべてにおいて電子計算機を用いて国税関係帳簿や書類を作成し、保存しておく必要があるでしょう。なお、”電磁的記録”とは、電子データを意味する法律用語です。
また、電子データの保存の仕方としては、第4条2項において”当該国税関係書類に係る電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存をもって当該国税関係書類の保存に代えることができる。”とし「電子計算機出力マイクロフィルム(COM)」による保存を認めました。さらに第4条3項で「スキャナ」を使用した電子データの保存も認めています。
ただし、第4条3項には直接に「スキャナ」という文言が書かれているわけではありません。代わりに第4条3項には”当該国税関係書類に記載されている事項を財務省令で定める装置により電磁的記録に記録する場合”と記されています。
この”財務省令で定める装置”とは、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則 第2条5項」において「スキャナ」と説明されているのです。
電子帳簿保存法の条文から見る注意点!
電子帳簿保存法は、第1条から第11条(改正により2024年時点では8条まで)および附則で構成されています。その下位法令に、電子帳簿保存法における施行規則である「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」があり、細則などが規定されているのです。
そして、電子帳簿保存法を読み解く場合には、これらの施行規則にも目を通さなければならないでしょう。罰則についてはその多くが「会社法」に規定されています。こちらの内容も、電子帳簿保存法と合わせて条文をチェックするようにしましょう。
電子帳簿保存法は、時代に合わせて多くの改正を続けてきた法律です。そのため、年度によって条文の内容が異なる場合があります。特に電子帳簿保存法の「第7条」および「旧10条」については注意が必要でしょう。令和3年度(2021年)の税制改正により、電子帳簿保存法の条文が大きく変更されました。それによってそれまでの第10条は廃止され、その内容を補う条文が第7条として新しく制定されました。2022年1月1日から施行されている第7条は、次のように規定されています。
“所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない”
そして、電子帳簿保存法の旧10条には、「電子取引の場合においても、国税についての帳簿や書類を書面で出力すれば、電子的記録(電子データ)での保存は不要」との趣旨の、電子帳簿保存における例外規定が制定されていました。しかし、令和3年度の改正によってこの規定が廃止されています。それによって、原則、すべての電子取引において電子データ保存が義務化しました。
なお、電子データ保存へと切り替えるための「宥恕措置」の期間は2023年12月31日に終了しましたが、代わりに2024年1月1日からは新しい「猶予期間措置」が設けられています。したがって、移行が済んでいなくとも、即ペナルティの対象にはならないでしょう。
しかしながら、第7条の条文を見る限り、電子取引についての帳簿や書類は、電子データでの保存が必須になったといえます。さらに猶予期間がいつまで続くかは不明です。なるべく電子帳簿保存法に対応しないままで放置せず、早い段階で電子データ保存に移行するようにしましょう。
電子帳簿保存法におすすめの会計ソフトは?
電子データ保存への移行には、電子帳簿保存法に対応した会計ソフトの利用がおすすめです。今回は3つの人気会計ソフトを紹介します。
WEBバランスマン
公益情報システム株式会社の「WEBバランスマン」は、簿記の初心者でも扱えるような簡単でわかりやすい公益法人向けの会計ソフトです。伺書からの入力も標準装備されているので、作業の簡易化にも向いているでしょう。
さらに、平成16年と平成20年の公益法人会計基準改正にも対応しています。「変換マスタ」を使うことで、どちらの基準の決算書類も簡単に作成できるでしょう。また、会計や事務において按分が必要な伝票も「按分マスタ」によって一度で素早く処理可能です。
弥生会計オンライン
「弥生会計オンライン」は、インボイス制度と電子帳簿保存法の両方に対応している、クラウド型の便利な会計ソフトです。日付や金額を入力するだけの簡単なシステムであるうえに、操作方法や仕訳のやり方を専門スタッフに相談可能になっています。そのため、初めて簿記にチャレンジする人でも安心して使えるでしょう。
また、他社の会計ソフトを使っている場合でも仕訳データの移行が簡単なことも、おすすめできるポイントです。1年間無料のお試し期間も用意されているので、興味がある方は試してみましょう。
マネーフォワード クラウド会計
「マネーフォワード クラウド会計」は、便利な機能が多数搭載された会計ソフトです。インターネットバンキングや電子マネーのサービスをソフトと結びつける「連携機能」を使えば、取引明細データを自動取得できるようになります。
さらに、「自動入力・自動仕訳」機能によって、アップロードした請求書や領収書などの自動仕分けが可能になっています。そのため、作業効率を大幅にアップさせられるでしょう。日々の仕訳データから経営状況のモニタリングもできるので、経営の把握にも役立ちます。
電子帳簿保存法の条文についてまとめ
電子帳簿保存法の条文を見る限り、この法律への対応は、これからの経営においても必須といえるでしょう。また、電子データによる帳簿や書類の保存ができるようになれば、業務効率化にも効果的かもしれません。まだ電子データ保存への移行が済んでいないのなら、早く済ませるのがおすすめです。
もし会計ソフトが決まっていないのであれば、今回紹介したソフトを試してみてはいかがでしょうか。