「電子帳簿保存法」では、取引に関連するすべての書類は、電子データとして保存しておく必要があります。法律に関することなので、対応しなければ罰則の対象になってしまう可能性もあるでしょう。そして、その対象は取引に用いた「見積書」も例外ではないのです。ただし、保存の対象になる見積書や保存期間は、状況によって細かく変わります。
では、具体的にどこまでの期間で必要なのか、確認していきましょう。
電子帳簿保存法の見積書はどこまで必要?
「電子帳簿保存法」では、見積書は国税関係書類の中の「取引関係書類」として扱われます。そして、相手から受け取った見積書だけではなく、自らが発行した見積書の控えも保存の対象となるのです。また、電子取引に伴って発行された見積書は、国税関係書類とは別の分類となりますが、保存義務がある点は変わりません。
個人事業主と法人では保管期間が異なる
電子帳簿保存法で保管しなければならない見積書の対象は、実は全ての見積書ではありません。対象となるのは、発行されてから一定期間中と決められているのです。そして、個人事業主か法人かによって、保管すべき期間が異なっています。
法人の場合は、保管期間は原則として7年間の保存が必要になります。それに対して個人事業主では、5年間と若干短くなっているのです。また、赤字になった法人が、「欠損金の繰越控除」を受ける場合、保管期間は7年ではなく10年となっています。
契約に至らなかった見積書は対象外
電子帳簿保存法において保存義務が発生するのは、契約に至った見積書のみです。契約まで至らなかった見積書の扱いに関しては、電子帳簿保存法に記載がありません。そのため、仮に処分してしまっても罰則の対象になるようなことはないでしょう。
電子帳簿保存法の見積書の保存方法
電子帳簿保存法に対応する場合、見積書の保存方法は複数から選べる場合があります。具体的にどのような方法があるのか、確認していきましょう。
電子データ形式で保存
電子取引を行った場合、見積書はメールやPDFなどの電子データの形式で発行されるでしょう。その見積書は、そのまま電子データ形式として保存しておく必要があります。最も確実な方法は、電子データの原本をそのまま保存しておく方法です。
その他には、見積書を元にPDFのデータを作成したり、スクリーンショットで画面ごと保存したりするという方法もあります。ただ、その場合は、見積書の改ざんができないようにする措置や、データの検索が可能であることなどの要件を満たしておく必要があるでしょう。
スキャナあるいは撮影で保存
見積書が紙の状態で発行された場合は、スキャナで保存する方法と、スマートフォンなどのカメラを使って撮影する方法を選ぶことができます。どちらも、紙を電子データに変換する方法です。その際には、いくつか満たさなければならない要件があります。
要件は重要書類と一般書類で異なりますが、見積書は一般書類であるため、要件は比較的緩いでしょう。ただし、スキャンの場合は画質が200dpi以上、スマホなどで撮影する場合であれば200dpi以上相当のカメラを使わなければなりません。また、改ざんを不可能にする措置や、日付や取引金額を使用した検索なども要件に含まれます。
紙のままで保存
取引先が発行した「紙の見積書」を、スキャナやカメラを使って電子データ化することは、あくまでも任意となっています。そのため、電子取引でない限りは電子データとしての保管は義務ではありません。よって、紙のままで保管しても特に問題はないでしょう。
電子帳簿保存法の見積書についての注意点
電子帳簿保存法への対応のために見積書を保存する場合、いくつか気をつけなければならないことがあります。具体的にどのようなことに注意すべきであるのか、確認していきましょう。
電子データの見積書を紙にして保管しないように
電子帳簿保存法では、紙の見積書は紙のまま保管する以外に、電子データ化して保存しておくという選択肢もあります。そのことから、電子データの見積書も、他の形に変換しても大丈夫と考える人がいるかもしれません。しかし、電子帳簿保存法で許されているのは、あくまでも紙から電子データへの変換のみです。それとは逆に、電子データの見積書を紙に出力して保管することはできないので、誤解しないように注意しておきましょう。
また、一度紙に印刷した後でスキャンし、電子データ化することもNGとなっています。事業所ごとの見積書の整理などで、一度紙にしたいと考える人もいるかもしれませんが、止めておきましょう。
紙と電子データを併用すると混乱しやすいので注意
紙の見積書を受け取ることがある場合、電子データ化せずに紙のままで保存するという選択肢もあるでしょう。ただし、紙と電子データの両方で管理していると、混乱してしまうリスクが高いです。どの見積書が紙と電子データのどちらで保存されているのか、わからなくなってしまうかもしれません。
そういったことを防ぎたいのであれば、スキャナやカメラを使って、電子データ形式での保存に統一してしまった方が良いでしょう。もし、どうしても紙と電子データを併用しなければならない場合は、混乱しないように注意して、それぞれの取り扱い方法を定めてください。
保存すべき見積書と不要な見積書と混同しないように
前述した通り、電子帳簿保存法では、契約に至らなかった見積書は処分しても特に問題はないことになっています。その処分をする際に、保存すべき見積書も一緒に廃棄するミスが起こらないように注意しておきましょう。
例えば、必要な見積書と不要な見積書をひとまとめにしておいて、ヒューマンエラーなどによって廃棄してしまうのは十分あり得るミスです。そのようなミスを防ぐために、保存しなければならない見積書は、あらかじめ別のところに移しておきましょう。
電子帳簿保存法の見積書保存におすすめな会計ソフト
電子帳簿保存法に対応した形で見積書を保存するには、専用のソフトを使った方が良いでしょう。そこでこの章では、おすすめの会計ソフトをいくつか紹介します。
WEBバランスマン
公益法人に特におすすめなのは、公益情報システム株式会社が提供している、「WEBバランスマン」です。会計に関する様々な情報を、簡単に入力できるフォーマットとなっています。よって、会計に詳しくない人でも、問題なく使える可能性が高いでしょう。
また、オンプレミスとクラウドの2通りの形式から選択できるのが特徴で、利用者の環境に合わせることも可能です。そして、オプションで「電子保存機能」を追加できるため、電子帳簿保存法へも対応可能です。見積書などの書類をドラッグするだけで伝票と結び付けられるうえに、検索や確認など、電子帳簿保存法の要件も満たせるようになっています。電子帳簿保存法の審査期間である「JIIMA」の認証を受けているため、安心して利用できるでしょう。
freee会計
会計ソフトとしての知名度が高い「freee会計」も、電子帳簿保存法に対応しているおすすめのソフトです。クラウドタイプなので、サーバーを設置することなく、簡単に導入できるでしょう。そして、複数のパソコンやモバイル端末を連携させて、会計の手続きを行うということも可能になっています。
見積書の保存に関しては、freee会計で作成した書類は、最初から電子帳簿保存法にも対応している形となります。そのため、見積書の控えを保存することは比較的難しくなく、電子帳簿保存法が定めている要件を満たすための特別な操作も必要ありません。そして、受け取った見積書は、紙と電子データのどちらであっても、PDFなどのデータ形式で一括保存可能です。
勘定奉行クラウド
サポート体制が充実していることを求めるのであれば、「勘定奉行クラウド」がおすすめです。基本的な使い方やトラブル対応などを、オペレーターに直接訊ねられるので、使用時に問題が発生しにくいでしょう。そして、見積書を始めとする書類を、タイムスタンプの自動付与など、電子帳簿保存法の要件を満たす形で保存できます。規模が大きな企業内で分散された見積書を、一括管理することもそう難しくはないでしょう。
正しい知識で保存する見積書を取捨選択しよう
取引を行う事業者にとって、電子帳簿保存法への対応は他人事ではありません。取引先から見積書を受け取ったり、自ら見積書の発行をしたりする機会は多いでしょう。そのような時に、問題ない形で保存できるように対応しておきましょう。
また、余計な保存領域を使用しないよう、期間が切れたり、契約に至らなかったりして、必要なくなった見積書は正しい知識を身に付けて適切に処分しましょう。