基本的に、企業や法人を経営するうえで謝礼金を支払った際は「経費」として計上するでしょう。しかし、謝礼金はものを買う場合やサービスを利用する場合と違い、領収書を発行しないケースも多いのです。謝礼金を支払う際は、領収書を発行すべきなのでしょうか。
ここでは謝礼金の領収書を発行すべきかという疑問や、計上する際の勘定科目や注意点について解説します。
謝礼金とは
まず「謝礼金」とはどんなものなのでしょうか。謝礼金とは、何かをするにあたって協力してもらった際に、その協力に対して「お礼や感謝を表すために支払うお金」のことを指します。例えば、本を執筆するにあたって専門家に取材をしたり、学校で講師を呼んで講演をしてもらったりする際に支払うお金が謝礼金に当たります。
謝礼金と報酬はどう違う?
謝礼金と混同されやすいのが「報酬」です。報酬は「労働やサービスの対価」として支払うものを言います。前の章で、謝礼金を支払う際によくあるケースとして講演や専門家への取材を挙げましたが、これらに関しても賃金が発生する労働と捉えることもできるので、報酬と謝礼金は同じものではと感じるかもしれません。
しかし、報酬は仕事の対価であるのに対し、「謝礼」は仕事への協力などを引き受けてくれたお礼と言えます。さらに謝礼はお金だけではなく物品で支払うこともでき、その中でも特にお金でお礼をする場合に支払うものが「謝礼金」に当たるのです。
謝礼金は領収書を発行すべき?
謝礼金は少額になることが基本なので、領収書なしでも良いと思うこともあるでしょう。しかし、基本的に謝礼金の金額に関係なく「経費として計上したいと考えているもの」は領収書を発行した方が良いでしょう。謝礼を受け取る側も、確定申告の際に謝礼を受け取った履歴が無いと手続きが面倒になってしまいます。これらを考慮すると、基本的に謝礼金を支払う場合は領収書も用意するものと思っておくと良いでしょう。
しかし、領収書を発行し忘れてしまったり、失くしたりしてしまうこともあるかもしれません。そういった場合には、領収書の代わりとなるものを用意する必要があるでしょう。謝礼金の場合は、銀行振込で支払いをしたなら「振込明細書」など振込の記録がわかるもの、直接手渡しで支払いをする場合には「出金伝票」も用意すると良いでしょう。ちなみに出金伝票とは、現金での出費を記録したものを言い、文房具店などで様式が手に入りますが、ExcelなどPCで作成しておいたものでも問題はありません。
謝礼金はどうやって経費に計上すれば良い?
それでは謝礼金の支払いをする場合、経費にどのように計上すれば良いのでしょうか。勘定科目の仕分け方法について紹介します。まず、謝礼金は一般的には「交際費」もしくは「支払手数料」として処理します。それでは、どのような場合に交際費または、支払手数料と処理していくのかを見ていきましょう。
交際費として処理する場合
先ほど解説したように、謝礼金はお礼として相手に支払うものです。「直接企業の運営や利益に関係しているものではないが、なにか相手にしてもらった場合」などは、謝礼金を「相手とこれからも円滑な関係を築くための費用」と考え、交際費として計上します。交際費で計上するケースの例としては、講演会を開催するにあたって講師を紹介してもらった場合や、お得意様から新たな取引先を紹介してもらった場合などが挙げられるでしょう。
ただし、交際費として処理できるケースはかなり限られているので注意が必要です。基本的に交際費として計上するのは、「取引先が企業だった場合」です。取引先が個人だった場合は、一般的には次に紹介する「支払手数料」として計上する必要があるでしょう。
また、頻繁に1つの企業に対して交際費を支払うのはあまり好ましくありません。加えて、金額が大きくなった場合も同様です。この場合は「販売手数料」として計上します。
支払手数料として処理する場合
先ほど解説したように、謝礼金を支払う相手が個人だった場合は「支払手数料」として計上します。これは、個人から人を紹介してもらう場合は「それを事業として営んでいるもの」と判断されるためです。ただ、「相手が個人事業主だった場合」かつ「企業として取引がある場合」は、相手に対する接待費用と判断できるケースもあります。
謝礼金を受け取った場合は売上もしくは雑所得扱いが一般的
謝礼金を受け取った場合は、「売上」もしくは「雑所得」として扱われます。取り扱っている事業に関連する内容の謝礼金の場合は売上、そうでない副業などの場合は雑所得になると考えると良いでしょう。そして、売上として扱う場合は謝礼金を「経費」として計上することもできます。経費にすれば節税にも繋がるので、このシステムを活用すると良いでしょう。
また雑所得として処理した場合、企業であれば基本的に全額申告する義務がありますが、普段は会社員として働く個人が副業で謝礼金を受け取った場合は、年間で20万円以内なら申告する必要がありません。ただし、申告が不要なのは「すべての雑所得を合わせて20万円以下だった場合」なので、複数回謝礼金を受け取った場合はしっかりすべての金額を確認し、申告漏れがないようにしましょう。
謝礼金や領収書の管理におすすめの会計管理ソフト
領収書などの管理を紙で行うと、必要な場面で見つからないことも多いでしょう。そのため、謝礼金や領収書を管理する必要がある場合は、会計管理ソフトを利用するのが良いでしょう。ここでは、おすすめの会計管理ソフトを紹介します。
WEBバランスマン
特に会計担当者に初心者が多い場合におすすめするのが、公益法人向けの会計管理ソフト「WEBバランスマン」です。WEBバランスマンは、伺書のまま入力するだけという簡単な構造になっています。そのため、簿記の知識が一切無い状態でもそのままデータを入力すればよく、公的書類の提出や複雑な処理が多い公益法人でも手軽に利用できるでしょう。
WEBバランスマンの魅力は、「謝金システム」と呼ばれる謝礼金に特化したシステムが用意されている点です。入力が簡単なうえに、明細書や源泉徴収票の発行、Excel出力も手軽にできるので、臨時職員や講師への謝礼金が発生する場合でもストレスが少なく作業に取り組めるでしょう。
freee
クラウド会計ソフトの「freee」も、会計作業がとても簡単なので初心者や小規模事業者におすすめです。謝礼金を支払うにあたっては、領収書があると支払う側も受け取る側も便利ですが、領収書を発行する作業も面倒でしょう。freeeなら領収書の発行も自動で行なうことができるので、謝礼金を支払うにあたって発生する手続きも手軽に終えられます。
謝礼金の領収書を取り扱う際の注意点
謝礼金は他の勘定科目と異なり、多少特殊な面もあるため、取り扱う際には注意が必要です。それでは、謝礼金の領収書を取り扱う際の注意点について解説していきます。
領収書には内訳を細かく記載する
謝礼金の領収書を発行する際には、「支払手数料」などと記載するのではなく必ず内訳を細かく記載し、どんな目的で謝礼金を支払ったのかが分かるようにしましょう。
多くの企業では、無断で接待を行ったり不正に取引先にお金を渡したりすることを禁止しています。「接待費」など内容がわからないものを記載していると企業の調査の対象になってしまい、自分のキャリアに響いてしまう可能性も高いでしょう。自分を守るという意味でも、領収書を発行する際には必ず「◯◯の講演時の謝礼金」など、内訳がはっきりわかるように記載してください。
源泉徴収も忘れずに
企業から個人へ謝礼金を支払う際に忘れてはいけないのが、源泉徴収の処理です。基本的に謝礼金の大半のケースにおいて、源泉徴収が必要になるでしょう。源泉徴収税の税率は原則10.21%、100万円以上の支払いの場合は「100万円を超えた部分」の税率が20.42%になります。特に、金額が小さい場合は小銭が出てしまうこともあるので、源泉徴収税も加味したうえで謝礼金の金額を決めると良いでしょう。
謝礼金は基本的に支払手数料か交際費で処理しよう
謝礼金として支払いを行う場合、基本的に「支払手数料」か「交際費」で処理します。どちらに仕分けるかは、謝礼金を支払う相手が個人か法人か、謝礼金は事業に関連するものかどうかで変わってくるので、よく確認したうえで記帳しましょう。
また、謝礼金は手渡しのケースも多く、管理が面倒になりがちです。そこで申告漏れを防ぐためにも、謝礼金も含めて会計ソフトを使って管理すると良いでしょう。