謝礼金を渡したとき、消費税がかかるかどうか気になっていませんか。インボイス制度の開始に伴って、消費税が課税される取引かどうかを厳密に考える傾向が強まりました。さらに、謝礼金を渡すシーンだけでなく、受け取るときにも注意が必要になります。
この記事では、謝礼金が消費税の課税対象になるのか、インボイスとの関係はあるのかを詳しく解説します。
謝礼金とは
「謝礼金」とは、謝金や謝礼とも言われる費用です。これは、相手に協力してもらえたときなどに、感謝の気持ちを示す目的で渡す金品を指します。例えば、相手を訪問して少し話をさせてもらったり、パネルディスカッションに参加してもらったり、研修で講演をしてもらったりするときに謝礼金を支払うことがあります。
謝礼金と報酬の違い
謝礼金は「報酬」と類似していて混同していることもあります。謝礼金はお礼の意味合いが強いことが特徴で、とくに「相手に特別な依頼をして対価として渡す」という意味合いはありません。一方、報酬には「役務に対する対価」としての意味合いがあります。例えば、雑誌の原稿を作家に依頼したときに渡す原稿料や、弁護士や司法書士などの業務対価として支払う料金などが報酬に相当します。
しかし、謝礼金と報酬の境界線を引くのが難しい場合もあるので注意が必要です。例えば、学会で集まったときに夜に自然に座談会が始まったとしましょう。そこに有名大学の教授がやってきて参加し、音頭を取ってくれたお陰で座談会が盛り上がったとします。その学会の主催者が教授に対して、座談会の引き立て役になってくれたことに感謝して謝礼金を渡すというときに渡す場合は「謝礼金」です。
しかし、学会の主催者が教授に座談会への参加を依頼して対価を支払うという場合には「報酬」になります。このように、相手の行動に対して金品を渡す際の相手との関係性によって謝礼金か報酬かが概ね決まります。
謝礼金としてみなされる範囲
謝礼金と報酬を区別することは、会計処理上では特に重要です。日常的には講演料や原稿料も、謝礼金と言って渡されていることがあるでしょう。厳密に言えば、これらは報酬に相当することがほとんどで、会計処理では「支払報酬」や「業務委託費」などいった勘定科目を使用します。
しかし、お礼の気持ちで渡す謝礼金の場合には、通常は「接待交際費」となるのです。このような位置付けで謝礼金に区分されるかどうかを判断すると、会計上はわかりやすくなるでしょう。
謝礼金に消費税はかかる?
謝礼金を渡したときには、消費税が課税されるのでしょうか。インボイス制度とかかわりが深い部分なので、詳しく見ていきましょう。
報酬の場合は消費税の課税がある
役務の対価として相手に報酬としての謝礼金を渡した場合には、消費税の課税対象になります。例えば、シンポジウムで招待講演を依頼して謝礼金を渡した、事業の相談をコンサルタントに依頼したときに謝礼金を出した、スポーツ選手に雑誌の表紙にする写真を撮影させてもらった対価として謝礼金を支払った、というときには消費税を支払わなければなりません。
お礼の場合は消費税は不課税
お礼としての謝礼金の場合には、消費税は不課税になります。これは、「対価性がない支払い」と見なされるので不課税対象になります。消費税が課税されるのは、役務の提供などの「対価性のある行為が伴うときだけ」だからです。
海外でのサービスに対する謝礼では不課税
例外として、海外でのサービスの場合には、役務の報酬として謝礼金を支払った場合でも消費税は不課税になります。あくまで「日本国内での消費活動に対して課税される」のが消費税だからです。ただし、サービスを受けた国で別途消費税を支払わなければならない場合もあるので注意しましょう。
謝礼金とインボイス制度の関係
現実的には、謝礼金を支払っている取引の多くが消費税の課税対象になります。インボイス制度では、課税仕入れであるかどうかを的確に判断して明記する必要があります。特に、インボイス制度との関わりで注意したいのが以下の3点です。
消費税がかかる謝礼金かどうかを区別する
まずは謝礼金と言っている金品が、消費税の課税対象になるかどうかを正確に区別することが必要になります。消費税がかかる謝礼金の場合には、例えば、1万円の報酬について1,000円の消費税を追加して11,000円を支払います。
しかし、お礼として謝礼金を渡す場合には10,000円でも問題ありません。支払う側は、相手にも内訳がわかるように、謝礼金と消費税の明細がわかる書類を添付するのが適切です。
相手が適格請求書を発行できない場合がある
消費税が課税される謝礼金の場合には、相手から「適格請求書」を発行してもらわなければ仕入税額控除を受けることができません。例えば、個人事業主に原稿を書いてもらったり、大学教授に講演してもらったりしたときには、相手が「適格請求書発行事業者」ではない場合があるでしょう。
相手が「免税事業者」の場合にはあえて適格請求書発行事業者になっていないこともあります。この場合には仕入税額控除がない分、消費税の納税額が高くなってしまうので注意が必要です。さらに、会計処理上でも適格請求書とは区別しておくことが重要になります。
課税事業者でも申請をしていない場合がある
謝礼金を支払った相手が課税事業者だったとしても、必ずしもインボイス制度に対応した適格請求書発行事業者となっているとは限りません。請求書が発行されてからインボイス対応をしていないことに気づく場合もあるでしょう。あらかじめ相手が適格請求書発行事業者として申請を済ませているかどうかを確認しておくことが大切です。
謝礼金やインボイス制度も管理できる会計ソフト
制度が複雑で困っている人は、謝礼金の取り扱いやインボイス制度に対応している会計ソフトを使用すると便利で失敗が少なくなるでしょう。特に講演や原稿などの依頼をすることが多い事業者では、適切な会計処理を簡単におこなえるような会計ソフトを使うのがおすすめです。ここでは、おすすめの会計ソフトを紹介します。
公益情報システムの会計システム・謝金システム
公益情報システム株式会社が提供している「会計システム」と「謝金システム」を併用するのが、公益法人向けのおすすめの方法です。謝金システムでは、講師への謝礼金の支払いや、臨時職員への報酬の支払いなどの一元管理ができます。
さらに源泉徴収票や法定調書の作成にも対応していて、簡便なインターフェースになっているのも魅力的なポイントです。同社の会計システムと連動しているので、併せて使用すると効率的に会計処理をおこなえます。オンプレミスでの使用にも対応しているので、安全性の高い会計システムを運用できる点もメリットです。
弥生
「弥生」はクラウド型の会計ソフトとして大手で有名です。謝礼金やインボイスへの対応もできており、最新のサービスを常にクラウド上でアップデートしてくれる点がメリットです。「弥生会計オンライン」やクラウド請求書ソフトの「MISOCA」が主に会計処理に活用できるソフトで、インボイス対応という点では特設サイトもあるのでわかりやすいでしょう。一般企業からは、弥生のクラウドサービスは安定して人気があります。
マネーフォワード
「マネーフォワード」もクラウド型の会計ソフトとして広く用いられています。インボイス制度に対応しており、謝礼金の会計上の取り扱いについても情報発信をしています。50人以下の企業であれば無料で始められるサービスがあるので、使い勝手を確認してから本格導入するかどうかを判断できるのも魅力です。マネーフォワードは拡張性が高いので、バックオフィスの業務効率化も目指したいときに適しているでしょう。
謝礼金の消費税についてまとめ
謝礼金は、「国内での役務に対する報酬」という形式の場合には消費税が課税されます。また、インボイス制度では、謝礼金が消費税の課税対象になるかどうかを的確に区別する必要があります。その中で、相手が適格請求書発行事業者ではない場合もあることを考慮して対応しなければなりません。
制度が複雑になっているため、会計処理を正確に、効率よく行うためにも、会計ソフトを活用することをおすすめします。