多くの企業に影響を及ぼすとされている「電子帳簿保存法」。2024年1月から本格的に電子取引の電子データ保存の義務化がスタートします。そこで今知っておきたい、電子帳簿保存法の要件や条件を満たさないときのリスク、便利なソフトまで紹介します。どう対応すれば良いのか分からない、対策が不十分だと感じるのならぜひこの記事を参考にしてみてください。
電子帳簿保存法の要件についての基礎知識
電子帳簿保存法の要件
電子帳簿保存法には大きく分けて3つの保存区分があり、それぞれの区分によって求められる要件が異なります。電子帳簿等保存の区分では2022年1月1日より要件が緩和されていて、最低でも3つの条件さえクリアしていれば電子データでの保存が認められているのです。最低限の要件とはシステム関係書類の備え付けと可視性の確保、税務職員による電子データのダウンロードに対応していることになります。この他に細かな条件をいくつかクリアしていれば、優良な電子帳簿として認められるケースも珍しくありません。優良な電子帳簿になると確定申告のときに総勢額と申告納税額の差額を支払うときに発生する、「過少申告加算税」が5%ほど免除されるのがメリットです。
真実性の確保では最低限の条件として、システム関係書類の備え付けが挙げられます。事務処理のマニュアルや操作説明書、システムの概要や仕様書を準備することが必要不可欠です。それ以外には帳簿のデータの修正や削除を行った場合、修正や削除をしたことが分かるようになっていなければなりません。修正や削除をした跡がないと、不正や隠蔽を疑われてしまうのです。またデータ入力をしてから一定期間が経過しても、あとで見返したときに内容を確認出来るようにしておきます。
可視性の確保では見読性の確保と検索機能の確保の2つの要件があります。見読性の確保では電子データを保存する場所に、パソコンとともに使える電子計算機やディスプレイ、プリンターやプログラムなどの操作説明書を備え付けましょう。データはきちんと整理された状態で、即座にディスプレイや書面に出力することも求められる条件になるのです。
検索機能の確保では検索機能が、いくつかの要件を満たしていなければいけません。帳簿の種類に応じて勘定科目や取引年月日、取引金額などの検索条件を設定出来るようにしておきます。記録項目の中でも、特に日付と金額については範囲を指定して検索出来るようにすることも重要です。
スキャナ保存を行うときの要件は、書類の種類によって条件が違ってきます。重要書類の場合は取引開始から終了までの内容を明らかにして、取引期間中に作成される書類の真実性が証明出来る書類を作ることもクリアしなければなりません。さらに書類の受領後は7日以内にデータを入力、例外が認められている場合は最大2ヶ月の猶予が与えられます。取引においてあまり重要視されていない一般書類は取引が発生した瞬間にデータを入力する必要はなく、まとめて入力などをしても構いません。
電子取引に関するデータの保存の要件は、電子データにタイムスタンプが押されたあとに取引先と電子データを授受出来ること、データの内容を変更したときにはその内容が確認出来ることも条件の一つとして数えられています。またパソコンやプログラム、プリンターなどのマニュアルを備え付けること、必要な検索機能が備わっていることも大事な要件です。
電子帳簿保存法の要件を満たす手順
自社に電子帳簿保存法を取り入れ、その要件を満たすためには手順に沿って準備をしていきます。まずは自社は導入することで何をしたいのか、どんなことを達成したいのかを明確にしましょう。それによって導入するべき書類やシステムが変わります。次に電子化しなければならない書類を一覧表にし、作業がスムーズに進むように用意しておきましょう。システムの概要に関する書類の備え付けや見読可能装置の備え付けは自社のシステムを利用するので、特別何かしなければならないということはありません。
検索機能の確保は専用システムの導入をする、真実性の確保ではタイムスタンプ機能や証跡管理機能が備わっているシステムを導入すると要件は満たせます。導入するシステムやソフトによって満たされる要件が違ってくることもあるので、自社がクリアしなければならない要件を満たしているのか必ず確認しておきましょう。システムやソフトを操作する経理担当者にもマニュアル配布や講習会の実施をして、要件を満たすための努力をすることも忘れてはいけません。
電子帳簿保存法の要件を満たさない場合のリスク
電子帳簿保存法では、不正を防ぐため罰則はかなり厳しく設定されています。決まりを守ることができなければ、重課税という形での罰則が発生するのです。電子データの記録に何か改ざんした跡がある、隠蔽などが確認されると通常課せられる重課税に加えて、さらに10%がペナルティーとして発生するので注意しましょう。
電子帳簿保存法の要件を守りやすい便利なソフト
企業向けのソフト
一般企業に向いているソフトは、「弥生会計」です。様々な業種、業界に向けた会計ソフトを開発、販売しており、登録ユーザー数は280万人を超えていると言われています。電子帳簿保存法はもちろんのこと、インボイス制度など新しい法改正にも対応しているのが多くの企業に支持されている理由です。誰でも簡単に操作することが出来るのも特徴的で、あまり簿記や経理の知識がなくてもソフトを使いこなせます。画面も複雑なものはなくシンプルで、会計ソフトを使ったことがない初心者も安心です。
自動で取引明細の仕分けをしてくれるのも、嬉しいポイントです。銀行やクレジットカード、ネットバンキングにおける取引はすべて自動で仕分けをするので、いちいちデータを打ち込む必要はありません。手作業での業務は大幅にカットさせるので、人件費などのコストダウンにも繋がります。複数の支店などを持っている企業の場合は、情報共有がスムーズに出来るようになります。売り上げデータや取引データなどはリアルタイムで共有出来るので、逐一報告をしなくて済むのです。
公益法人向けの便利なソフト
公益法人向けの便利なソフトとしておすすめなのは、「WEBバランスマン」です。専門的な簿記の知識がなくても、比較的簡単に入力出来る設計となっています。伺書からの入力が標準装備されていることもあり、伺書から支出伝票まではじめに入力したデータは最後まで引き継いでくれます。何度もデータを手入力する手間が省けるので、効率的です。損益ベースでの予算入力を行った場合でも、資金ベースの予算表を作成出来るのも特徴的になります。
また貸借対照表や内訳表など、会計に欠かせない決済帳票の作成も簡単です。使う人たちの大切なデータを守る、セキュリティーにも力を入れています。世界150カ国以上、100,000を超える実績があるジオトラスト社のSSL証明書を取得しています。大切なデータが外部に漏れ出す心配がないのは、安心です。
担当者別の権限を取得することができ、見る人ごとにメニュー表示や会計権限、業務権限などの設定が出来るシステムとなっているところも良い部分です。権限設定をしておくとログインした人ごとに、細かく画面が変わります。責任者しか見られない、入力することが出来ない項目などを設定出来るので、機密性を高く保てるのは魅力的です。
電子帳簿保存法の要件を満たしてスムーズな会計を
複雑で難しい、面倒だというイメージもある電子帳簿保存法ですが要件のポイントや手順、気を付ける点をきちんと把握しておけばそこまで難しいものではありません。電子帳簿保存法に対応している専用のソフトも多く販売されているので、それを使ってみるのも一つの手です。特別な準備や勉強をしなくても簡単に要件をクリアしてくれて、改正後のリスク回避にもなります。